日韓議員連盟の軽挙妄動、なぜ、今、訪韓なのか?

宇山 卓栄

何のために訪韓したのか?

「こんな無神経な政治家はいらない!」

私は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領と笑顔で握手する日韓議員連盟の議員たちの姿を見て、こう思った。

訪韓して文在寅大統領と笑顔で握手する日韓議員連盟のメンバー(青瓦台Facebookより:編集部)

14日、額賀福志郎・元財務相ら日韓議員連盟の超党派の議員たちが訪韓し、青瓦台(韓国大統領府)で文大統領らと会談した。議員外交は日本国民の民意を得た議員たちによる、立派な外交の一つである。その議員外交がこんな無様な形で展開されたことに怒りを禁じ得ない。

「徴用工裁判など、無法なことをこれ以上続けるならば、我々としても考えがある。覚悟しろ!」くらいのことを日本国民を代表して、言いに行ったというのならばわかる。連盟の議員たちは「日韓請求権協定に反し、極めて遺憾」という従来のお決まり文句を言って、抗議しただけである。そして、同じテーブルを囲んで、文大統領らと茶を飲み、軽食を共にした。もう、バカとしか言いようがない。国民の怒りに火が付いている今この時に、こんな行動を取れる議員がいるとは信じられないことだ。

政治家は時に、民意に逆らい、或いは世論に与せず、孤高として行動せねばならないことがある。大義名分があるならば、民意や世論に迎合せず、やるべきことをやればよい。しかし、日韓議員連盟の議員たちが、国民の怒りの感情を逆撫でしてまで、訪韓をし、文大統領らと会うことの大義名分がいったいどこにあるというのか。しかも、前日の13日から、韓国は竹島周辺で2日間、軍事訓練を行った。とんでもない暴挙がなされている真っ最中に、である。だから、私は「こんな無神経な政治家はいらない」と言っているのだ。

財界の泣き言を聞く連盟の議員たち

この時期に、こういう行動をとった日韓議員連盟の議員たちは国民の感情を逆撫でするだけでなく、外交的にも、大きな損害を我が国に与えている。彼らの行動により、韓国は「結局、日本は尻尾を振って寄ってくる」と考えるだろう。韓国側は調子に乗って日本を甘く見て、ますます無法を仕掛けてくる。連盟の議員たちがその原因をつくっているのだ。

青瓦台Facebookより:編集部

文大統領は会合の中で、「司法の判決は三権分立において、尊重されなければならない。未来志向の日韓関係を大事にしながら、政府内部で、(対応を)協議している」と言った。これに対して、連盟の議員たちは何の反論もせず、「具体的にどんな対応策をとっているのか」と問い質すこともなく、スゴスゴと帰ってきた。いわゆる「元慰安婦」を支援する「和解・癒やし財団」の解散について、文大統領が「役割を終えたため、財団を解散した」と述べたことに対し、連盟の議員たちはまともに抗議すらしていない。

さらに、日韓議員連盟の議員たちを支持している日本の財界の存在も無視できない。「このままでは、韓国で商売ができない」と連盟の議員たちに泣き付いて、「何とかして、両国の仲を取り持ってくれ」と頼んでいる。連盟の議員たちも財界の泣き言を無視できない。財界だけではない。日本国内には、日韓関係が悪化することで損害を被る得体の知れない組織が無数にあり、そのような組織に日頃、世話になっている議員たちが彼らの泣き言を聞いている。日韓議員連盟の議員たちが、わざわざ今、訪韓するということに、日韓関係の裏側で蠢く勢力の強大さを感ぜずにはおれない。

文政権は革命政府

日韓議員連盟の議員たちに限らず、日本の議員たちには、文在寅政権について、決定的に欠けている認識がある。それは、「文政権は北朝鮮の工作によって生み出された革命政府」という認識である。文政権は恐怖政治によって、徹底的に保守派・反対勢力を締め上げて、北朝鮮の意向に沿って、従北・左派の革命政権の基盤を築き上げようとしている。

彼らのやっていることは韓国版「文化大革命」である。合法的に選挙に当選し、政権を運営しているところは、1930年代のヒトラー政権にも似ている。

12月4日、朴槿恵(パク・クネ)政権時代の朴炳大(パク・ビョンデ)氏ら前大法院判事2人を、検察は職権乱用などの容疑で逮捕状を請求した。最高裁判事経験者に対して、逮捕状が請求されるなどとは先進国では、あり得ない話だ。12月7日に、請求は棄却されたが、保守派に対する揺さぶりとして大きな効果があった。

徴用工裁判の判決が出る3日前の10月27日、大法院付属機関の法院行政庁の林鍾憲(イム・ジョンホン)前次長が逮捕された。朴前政権の意向を受けて、徴用工裁判の判決を先送りした容疑である。朴政権は判決が出ることで、日韓関係が悪化することを懸念していた。検察は当時の大法院長や判事らの関与についても捜査を進めており、前大法院判事2人がターゲットにされていた。これももちろん、「韓国版文化大革命」の一部である。

青瓦台は今や革命派によって、乗っ取られている。大統領秘書室長の任鍾晳(イム・ジョンソク)氏は全大協(全国大学生代表者協議会)という左派革命の学生運動組織の代表を務め、国家保安法違反で逮捕され、懲役5年の実刑判決を受けている。その後、国会議員となり、南北経済文化協力財団を運営し、積極的にかつ露骨に、北朝鮮へ資金援助を続けた。

任鍾晳氏以下、大統領秘書官級の31人にうち、19人が左派革命運動の経験者である。彼らは労組などの国内左派組織と連携をしながら、政治・行政の実務を取り仕切っている。金大中(キム・デジュン)政権や盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権でも、ここまで露骨なことはなかった。

文在寅の狙いは赤化統一

文大統領は今までとまったく違う新しい革命政権を打ち出すために、過去を完全否定する。新日・保守派の朴正熙政権が残した1965年の日韓基本条約のような「負のレガシー」は真っ先に否定すべきものである。国際法を遵守しようとする我々の常識は彼らには通用しない。

文政権は「積弊」という言葉を使っている。これは「保守政権時代に積み重なった弊害」を意味している。「積弊」を清算するという大義名分の下、保守派や反対勢力を葬り去ろうという革命が進行中なのだ。今回の徴用工裁判判決は革命という歴史の大転換において現れた「現象の一コマ」に過ぎない。この左派革命の流れは最終的に、北朝鮮主導の赤化統一へと行き着く。それは、我々にとって「荒唐無稽」なことであるが、彼らにとっては「遠大で偉大な目標」なのである。実際に、それへと向かう布石が今、一つ一つ着実に打たれている。

韓国は今や、北朝鮮のようなテロ支援国家と連携・協調する敵性国家であり、「話合えばわかる」ような相手ではない。日韓議員連盟の議員たちがノコノコ出掛けて行って、お決まりの「遺憾抗議」をして、何かが変わるという相手では決してない。

宇山 卓栄
扶桑社
2018-11-02