ポップ&テック特区CiP主催、「世界のeスポーツのいまとこれから」@慶應義塾大学。
GamingD/DETONATOR江尻勝氏、Twitch中村鮎葉氏、吉本興業家永洋氏を招き、今の熱気を共有しました。
江尻さんはゲームを33歳から始め、35歳で日本一になったかた。ゲーミングチームの運営を本格化し、台湾、フィリピン、韓国にハウスを設置して活動しています。
「日本と世界は大会の賞金や規模が違い、スピード感も違う。日本はeスポーツ文化を日本流で発展させていくべき」と指摘します。
「eスポーツの根幹は選手であり、日本は選手を増やす力が弱い。様々な企業がプロリーグを立ち上げているが、ビジネスとして続けるためには、魅力的な選手の育成を計画的に進めることが大事だ。」
中村鮎葉さんはゲームをやっていたことが嵩じて、日本1号社員として世界最大のeスポーツ配信企業Twitchに入社。eスポーツのデイリーアクティブユーザーは1000万人に達し、アメリカでは14%がユーザ。
eスポーツを見る人はゴルフやバスケより多いそうです。
「eスポーツはゲームをする、映像を見る、ソーシャルメディアという、誰もがしていることの複合系なので馴染みやすい。2005年当時ゲームの大会はあったが、地上波やDVDで見るしかなく、ネットが普及して状況を変えた。
eスポーツでスタジアムは埋められないと言われていたが、2015年に埋まった。中継したら現地に行く人が減るのでは?という疑問が上がるが、来場者はむしろ増えた。ただ大会を配信するだけでなく、ゲームをする人の日常がある。そういった瞬間も配信している。」
「日本でも4000枚のチケットが30分で売れた。成長は早い。日本は遅れていると言われるが、そんなことはない。おもしろいものがあれば、日本での大会であっても、外国からも人が来る。」
世界ビジネスを見ているTwitchの見解は、心強いです。
吉本興業の家永さん。eスポーツに関わる全ての事業領域をカバーし、エコシステムを構築すると言います。チーム運営(よしもとゲーミング)、海外(Dota2、Overwatch)、国内(シャドウバース、ポッ拳)、配信(Twitchなど+実況芸人)、イベント(渋谷∞ホールやイオンモール)。
「子どもがeスポーツの選手になりたいといえば、ええやん、と言える文化を作りたい。YouTuberも子どものなりたい職業の上位になった。eスポーツの選手も芸人も変わらない。吉本はスターとなるような選手を必ず作る。スターになった選手が輝けるイベントを開催する。」
3名にぼくはいくつかの質問を投げました。
質問1。2022年のアジア大会では正式種目となったが、オリンピックの正式種目になる可能性は?
江尻さん「簡単ではない。タイトルによる。」
鮎葉さん「オリンピック側がやって、と言ってもゲーム側がOKするかどうかわからない状況。」
おや、実現してもらいたいが、一筋縄ではいかないと。そこを努力するのが業界関係者の仕事と存じます。あっち側もこっち側も、ぜひ折り合いをつけてもらいたい。このチャンスを逃す手はありません。
家永さん「正式種目となればゲームに対する認識が変わる。どんどんやるべきだ。」
江尻さん「オリンピックでは暴力的なタイトルはNG。よって、スポーツゲームとなる可能性がある。スポーツゲームの見せ方も進化してる。普通のサッカーよりも面白く見せられるかも。」
スポーツゲームが選ばれるなら、リアルなスポーツよりもうんと面白く見られなきゃ ですよね。
質問2。日本もネット+LIVEで成長するのか?
鮎葉さん「そう。日本はネットのゲーム実況で競合会社が多い。スポンサーはゲームメーカー、機器メーカーなど。視聴者のサブスクライブや投げ銭などいろんな収入の体系がある。」
質問3。興行ビジネスは?
江尻さん「そこがネック。まだ興行ビジネスとして行ける規模ではない。パブリッシャーが開く広告のイベントが多い。」
家永さん「そこを狙っている。しかし無料のイベントが多く、いまお金を取ったら客が入らない。
それができるようになるためにスターを作る。」
質問4。選手をどう育てる?
江尻さん「まだ日本は自分の立場を理解してる選手が少ない。選手自身が自分はプロであり、お金をもらえるようになろうという危機感を持つことが大事。」
家永さん「海外チームで運用資金を回しながら、日本のeスポーツの文化をつくる、という段階。」
質問5。統一団体(JeSU)ができ、プロのライセンスを出す基盤はできたが、人材を広く育てるには? 例えば、Jリーグが下部組織をつくっているような。
鮎葉さん「海外ではやっている。頂点のリーグへ行くための予選がしっかりある。上に行くための道筋がわかっている。これがアメリカやヨーロッパの方式。」
質問6。eスポーツ大国になるには国家的に育てるべきでは?
江尻さん「アジアは官主導でプロとアマチュアが戦える場も、アマチュア同士が戦える場も、さらにその下もある。」
鮎葉さん「ゲーム禁止の学校もある。やっちゃダメという雰囲気があるから、繋がれない。首相が言えばすぐできる。」
会場の韓国コンテンツ振興院・黄代表「連合はJOCに入れるか?JOCに入るには学校や授業でやったりしないといけないと思うが、どうか?」
江尻さん「韓国は10年の国家的な戦略が桁違い。日本でも専門学校ができはじめている。いろんな地方に学校ができるといい。eスポーツを誘致したいという話もある。」
「JOCに入るためには、ゲームが日本の中でもっとポジティブに映る努力が必要。学校や地方公共団体団体が、もっと情報を発信すべき。そういうところにプロの選手やチームが貢献するのが次のステップ。」
会場の融合研究所・内田理事長「選手のスター性とは?」
江尻さん「スター選手をつくり出すのは無理。たくさんの競技する人の中から生まれるもの。よって、まず多くの人に興味を持ってもらう土壌をつくる。年齢は関係ない。世界でも高齢化が進んでいる。経験値が大事。」
2018年は日本eスポーツの元年。
知財計画2018でも初めて「eスポーツの発展」が盛り込まれ、国も認知しました。
ポップ&テック特区のCiPもeスポーツに注力します。
盛り上げていきましょう。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2018年12月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。