「お役所言葉」というものがあります。「可及的速やかに対処する」「虚心坦懐に受け止める」などの言葉を聞いたことはありませんか。こうした言葉は文章としては最悪で、なにも伝えていないことと同じです。
「検討する」「配慮する」「考慮する」などの言葉は、何かをすることを示唆しながら何もしない場合に使用されます。文字通り、「検討する」だけでは何も改善しません。さらに、抽象化を促すために「~化」「~性」など接尾語が用いられます。接尾語は単独では用いられる語ではありませんが、種類が多く造語力が高いことに特徴があります。
曖昧なので言質をとられたくない人にはピッタリな言葉です。たとえば、政治家が公約をしながらあとから撤回をすることがあります。しかし、政治家は「撤回をした」とは言わないでしょう。「~を慎重に精査した上で決定した」とするはずです。
選挙公約でお役所言葉を多用した政治家がいました。どうすれば公約に対する本気度を確認することができるでしょうか。簡単なのは、「期日」や「数値」を入れることです。
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<(1)お役所言葉の例>
○○の無償化については充分に検討したうえで回答する。
↓
<修正した例>
○○の無償化については○月○日までに回答する。
<(2)お役所言葉の例>
待機児童問題については充分に検討し対応を協議する
↓
<修正した例>
待機児童問題については○月○日までに対策を回答する。
<(3)お役所言葉の例>
パワハラの実態を究明し可及的速やかに対処したい。
↓
<修正した例>
パワハラ問題について○月○日までに対策を回答する。
--ここまで--
いかがですか。大分改善されてきましたね。文章は、誰が読んでも同じ理解ができる言葉に置き換えなければいけません。大切なことは言葉がなにを意味するのか明確化することです。「前向き」とはなにを基準にして判断するのか、「対応を協議する」とは具体的になにを話し合うのか。「期日」や「数値」を入れることでわかりやすくなります。
さて、拙著『即効!成果が上がる文章の技術』(明日香出版社)は出版後2週間で3刷と堅調です。この場をかりて皆さまに御礼を申し上げます。
尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員