勤労統計不正調査:各種統計データは信用できない?

政府の「基幹統計」の一つで、厚生労働省が賃金や労働時間を示す毎月勤労統計調査で不適切な調査をしていたということが大問題になっています。不適切な調査をすれば当然数字が変わってくるので、間違った数字が統計に利用されていたことになります。

毎月勤労統計は賃金や労働時間等の動向を把握し、その数字を様々な場面で活用していくという大変重要な統計なんです。しかしこれが、平成8年から22年に渡って、不適切な調査だったということで、驚きを隠しきれません。

何がどう不適切だったかといえば本来、毎月勤労統計調査では、500人未満の事業所については対象事業所を厚生労働省がサンプリング(抽出)して実施しているが、500人以上の事業所は「全数」調査することになっている。しかし、年を追うごとに最初は1割ぐらいはやらなかったのが3割ぐらいにまで広がっていった、すなわち、年々杜撰になり、悪質化していたと言うことです。

一般的には大きな事業所や会社の方が、その他の事業所や会社より給料が高い傾向がありますが、東京都では対象約1400事業所に対し、3分の1を抽出して調べていたそうです。
用いられた計数は、本来の係数ではないことから、全体としての賃金水準が下がりました。その結果、社会保険の給付金額が下がるということにもなっていたわけです。

例えば雇用保険の失業給付や労災保険の休業給付、障害年金などが、賃金水準の低い値で計算されていたため、実際の支給金額より安くなったわけですね。

今のところ対象となった人数は約2000万人で過少支給額は約537億円を超え37.5億円の追加給付を行うことになり。その支給にシステム改修や追加の事務経費などが必要となり、総額は800億円に膨らみ、システム改修には数ヶ月かかることから、実際の追加給付は来年度になる見通しとなりました。

何故こうなったのか?
余りにも対象会社の数が多いから手を抜いたという説がありますけれども、どこかの時点で手を抜いた結果、社会保険の支給額が下がる、これは一石二鳥だと気づいたのではないでしょうか。

厚生労働省からすれば、制度を変えることで、どんどん増えている社会保険の支給額を減らそうとすると、反対されて大変ですが、元のデータを変えて減らせば、だれも反対できませんよね。

毎月勤労統計は政府が発表する月例経済報告にも利用されています。どれだけの人が雇用されているのか、報酬が幾らなのかという数字は、GDP(国内総生産)の計算にも利用されています。

政府が発表している様々なデータに及んでいる今回の問題、政府が発表する様々な情報の信頼性が揺らいでいます。「中国が発表する経済統計は、数字をいじっていて、そのまま信じられない」と日本の経済評論家が言ったりしてますけど、これ他国のことを笑っていられないですよ。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年1月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。