iU vs ミネルバ大

山本秀樹著「世界のエリートが今一番入りたい大学ミネルバ」。
ハーバード、スタンフォードなどの大学を蹴って入学してくる、話題のパンクな大学。
2020年の開校を目指すiUの一つの指針とみています。
(ちなみに、i大は世界呼称統一のため、今後iUと呼びならわします。)

iUと共通することが多い一方、方向が異なる点もあります。
まず、共通点を見てみましょう。

1.ミネルバは全授業オンライン化。講義を禁止し、反転授業+完全アクティブラーニング。少人数授業。

iUもこれをやりたい。講義禁止、っていう腹のくくり方がいい。
知識はスマホで取ればいい。リアルな授業はディベートと創作。これまでの大学とはガラリと違います。

2.企業・社会が求めるスキルを身につける。

iUもそうします。大学が教えたいことと企業が求めていることのズレをマーケット・インでなくします。
クリティカル思考・クリエイティブ思考・効果的コミュニケーション・効果的インタラクションというミネルバの4汎用スキルは参考になります。

3.テニュア(終身雇用制)なし。

iUもそうします。テニュアは大学教員に競争力と進化インセンティブがない元凶。
むしろいかに自らを競争環境に置くかの設計を重視します。

4.企業との協働、インターン重視。

iUはこれをより押出し、インターン必修の「企業と作る」大学とします。構想そのものを数十の企業とともに設計しており、企業との協働を教育の軸に据えます。

ミネルバ創業者のベン・ネルソン氏は当初、構想が資本家などから拒絶されたそうです。その後、ピーター・ティール氏やラリー・サマーズ氏らの大物に認められて動き出したとのことです。iUは、構想当初から数多くの企業に支持されておりまして、企業からのニーズに合致していると感じています。

5.安い学費。

iUもミネルバ大と同水準(年150万円程度)の学費とする予定です。日本の大学としてはそこそこですが、アメリカのアイビーリーグからみれば数分の1。しかもiUはそれ以上に自ら学費を稼ぐ仕組みを講じ、実質負担ゼロ、いや学費を上回る収入が得られるよう努めます。

次に、ミネルバ大とiUの違いを整理してみます。

1.ミネルバは「トップエリート大学」を標榜しています。教員もトップ級のアカデミズム出身者。

iUはそれを目指すのではなく、より産業界で活躍するプロ、イノベータを創出したい。このため教員の大半は産業界出身のプロフェッショナル。

2.「ミネルバ研究所」を併置し、研究にも力を入れる。教育+研究。

iUは産学連携の実証研究をたくさん進めますが、いわゆる研究機関ではありません。他方、学生の起業をフォローする「i株式会社」を併設、全教員と全学生がビジネスを展開します。教育+ビジネス実践です。企業との協働にリアリティーを持たせます。

3.ミネルバはキャンパスを持ちません。

いいね。iUは日本の設置基準に基づき、キャンパスを持ちます。なのでこれを最大限に活かします。本校舎は墨田区に、さらに起業連携の場として港区竹芝に拠点を置く。そこを教育特区にし、さまざまな実験・実証の場にします。濃い産学連携空間を構築します。

ミネルバが世界7都市を巡って学ぶというのは魅力的です。アジアはソウルと台北。そして完全寮制。これらはiUもチャレンジしたい目標。海外の大学と提携し、学生が行き来できるグローバル・キャンパス・パスポートを用意したいと考えています。

他方、iUは「全員起業」のチャンスを与えます。社会起業を含め、失敗を恐れずチャレンジする環境を整えます。これはミネルバにもない仕組みで、なるほど!と思わせる成果を上げたいです。
他にも、世界にない仕組みに数多くトライしていきます。

とはいえ、iUはまだ構想段階の絵空事。既に実績を上げているミネルバ大ははるか遠い目標です。でも、だからこそ、それを超えるアイディアとパッションを結集し、世界のとこにもない大学を作りたいと考えます。産業界のみなさま、ご一緒しましょう。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2019年2月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。