下向く中国経済の行き先

岡本 裕明

中国の実情を冷静に見ることのできる方は中国経済の低空飛行ぶりに当然だろう、と言うでしょう。事実、統計の数字は眉唾物だし、都市部と地方の経済格差は拡大する一方です。共産党員と非党員の差別化もあります。更には共産圏のはずなのに貧富の格差は資本主義国家よりも拡大している事実を見るにつけ、共産主義とは名ばかりで自分の懐が全てという残念な形になりつつあります。

写真AC:編集部

中国人は昔から金銭に執着する人種で自分さえ儲けられれば、という発想が強い傾向があります。中国人と話をすると中国の社会システムは信用していないといいながらも、それをうまく利用して自らの金儲けに繋げているという抜かりなさも感じます。

そんな中国人も最近は抜け駆けして金儲けするにはちょっと難しくなったようです。国内株式は上海総合指数が2015年春の高値から崩落した後、現在はその半値程度で長く低迷しています。不動産についても既にピークアウトしているようです。日経によると1月の不動産販売は前年同月比3割減と報じられていますが、トレンドとしてみても販売は下向きが見て取れます。

また、海外で儲けるという手段も厳しくなりました。中国国内から海外への資金持ち出しは厳しく規制されていますが、いまだに抜け道はあるとされます。一方で、持ち出しても中国人が好きな投資対象国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどではいわゆる金融緩和の時期は終わっており、一般向け不動産投資は入口より出口が難しい状況でよりリスキーになっています。

既に富を蓄えた中国人は一時期、億人単位いるとされました。極端な話、日本の総人口ぐらいの人が富裕だったというわけです。過去形にしているのはその話題があったのが中国不動産がまだ好調な頃で中国政府の引き締め前だったからで、現在、どれぐらいいるのか、はっきりとしません。

共産党員は自分の資産を明白にしないはずですから隠れ富裕層もいる半面、投資やビジネスが失敗したケースも相当数あると考えられます。また、富裕層でも資金が寝てしまっている場合も多いと思います。

例えば売るに売れない不動産を抱えている、あるいは中国の経営者は自社株式を銀行に担保として差し入れて借り入れをする手法を取っていますが、株価の下落で担保割れが生じ、所有株を処分されるケースもあり、実態がつかみにくいところであります。

では中国経済の復活はあるのか、でありますが、個人的には内外で負の遺産も積み上がり、かなり厳しいところに追い込まれているように感じます。数多くの問題が指摘されていますが、俯瞰的に見ると現在の共産党体制でこの広い国土と14億の人口を支配するのは無理と思われる規模に到達しているように見えます。

ソ連が崩壊し、より小さな連邦制のロシアになったのと同様、中国は拡大主義ではなく一旦縮小をして立て直しを図らないと厳しい再生局面を迎えるように感じます。歴史的に見れば中国は様々な形で統治されて来ました。小国に分立していたこともあります。が、今置かれている状況は共産党という名の統制経済体制をこれだけ技術や情報が進化した時代においてアメリカより4倍以上の国民がいる国家で遂行するというかつてない挑戦であり、未経験ゾーンにあります。

アメリカでは各州においてある程度の自治性を持たせていますが、それは広い国土の中で中央政権の一本調子の支配には限界があるためであります。今の習近平体制はその逆でより統制を強化し、拡大中国を生み出そうとしています。しかし、ひたひたと近づく黒い影が国民のバブル崩壊と不満を吸い上げた時、思わぬ反撃に出くわすかもしれません。

良好な経済は国民を幸せにしますが、今の中国は国民や地方経済に無理強いをさせすぎています。あの文化大革命や天安門事件の二の舞を恐れてか国民はおとなしくしていますが、きっかけは思わぬところから起きるものです。

下向く中国経済の行方は国民の鬱積された強い不満のはけ口探しとなるのは歴史が証明するところ。習近平国家主席の手腕が試されるところではないでしょうか?

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年2月21日の記事より転載させていただきました。