米軍普天間基地の辺野古移設に伴う埋め立て工事の賛否を問う沖縄県民投票は24日、投開票され、反対派が7割超の圧倒的多数を占めた。注目の投票率は52.48%と県知事選(63.24%)を10ポイント下回ったものの、過半数は超えた。意思表明した有権者が4分の1を超えたことで、玉城デニー知事が条例に基づき、開票結果を国や米大統領に通知することになるが、法的拘束力はない。
個人的に注目していたのは、普天間基地の地元、宜野湾市民の選択だった。昨年9月の知事選では、敗れた佐喜真淳氏(前市長)の市内での得票数が玉城氏を上回り、同時に行われた市長選も、佐喜真氏と同じく自公維推薦の松川正則氏が県政与党側の候補に快勝している。その松川市長は、今回の県民投票について市議会で執行予算が2度否決されたことを受けて、当初は参加しない意向も示していた(その後、選択肢が2択から3択になり参加へ方針変更)。
こうした経緯は、宜野湾市民が、基地がやってくる辺野古を抱えた名護市民と真逆の利害当事者であり、市街地に軍用ヘリが飛び交う危険な状況から脱せるかどうか、県内の他市町村の住民以上に切実になっているからなのは言うまでもない。そして、県民投票で、宜野湾市民が埋め立て工事に反対することは、(あえて単純なロジックで説明すれば)普天間基地をなくす現実的な選択肢を自ら放棄する「筋違い」を容認することにもなる。
もちろん、市民にとってそんな二者択一で割り切れるものではない。もし親類縁者が名護市にいればより苦悩することになる。だから法的拘束力もない「政治ショー」に加担するのをよしとしない市民もいただろうから、棄権する人や、新設された第3の選択肢「どちらでない」を選択する人も県内の自治体で特に多くなるかもしれないとも考えた。
蓋を開けてみてどうだったか。宜野湾市の投票率は51.81%と知事選(65.69%)より14ポイント近くも下落したが、県全体との比較では僅かに及ばなかった程度で、市民はそれなりに投票には参加した。
注目の判断結果は、反対が66.8%で、賛成が24.4%。県全体(反対72.2%、賛成19.1%)よりは、それぞれ5ポイントほど反対派が少なく、賛成が上回る結果となり、県内の11市ではもっとも辺野古移転賛成の比率が高かった。そして第3の選択肢「どちらでない」を選んだ市民は8.8%と、県全体と同じ数字が出た。
玉城知事ら基地反対派の勢力は、宜野湾だけは「特異」な結果が出る可能性も視野に入れていたのかはわからないが、大きな傾向として県全体と変わらない結果になった。ネット上では、基地反対派がここぞとばかりに宜野湾の結果をダメ押しとばかりに嬉々として誇示し、投票前に宜野湾市の民意を強調していた賛成派への攻撃材料に使う言説がみられる。例えば、琉球新報のデザイン担当の社員「体操部のお姉さん」もリツイートしているが、こんなコメントだ。
しかし、本当に宜野湾市民は、「辺野古移設への反対=普天間の固定化」を望んでいるのだろうか。おそらく反対派や沖縄地元2紙は、「辺野古も普天間も要らない」という強弁をするのだろうが、そもそもこの選挙が始まる前から選択肢設定の問題はあった。前述したように、今回設定された選択肢では、利害がもろに絡んで、県内でもっとも難しい判断を迫られる宜野湾市民の民意を的確に反映できたのか微妙だ。
今さら言っても仕方のないことだが、例えば米重克洋さんのいうように、「①賛成②どちらかと言えば賛成③どちらとも言えない④どちらかと言えば反対⑤反対」の5択なら、②や④を選んだ宜野湾市民は多かったのではないか。
もし5択なら宜野湾市民が他自治体と異なる独特の民意を示した可能性は多少あると思うが、何れにせよ、宜野湾のように悩ましい選択肢を迫られた人たちの民意を含む、多様な考え方を示そうという視点がおよそ感じられる投票運営には思えなかった。
ただ、そもそも昨年9月の知事選の時点で、基地問題に関する県民の民意は相応に示されたと思うが、半年も経たずして県民投票を行った玉城氏ら県政与党勢力の政治思惑は、とにかく反対世論を形成することを急いだポピュリズム的発想にほかなるまい。結局、宜野湾市民の「多様な民意」など置き去りだったと思える。