高齢者暴走は政治家の問題なのではないか

篠田 英朗

普段は政治の話などしか文章で書かないが、これも政治の話ではないかと思い、書いている。

87歳のドライバーによる親子死亡事故の件だ。

NHKニュースより:編集部

現場には、子ども用のヘルメットが転がっていたという。あまりに胸が痛み、夜も眠れない人も多いのではないか。

政治の怠慢だ。

日本は少子高齢化の深刻な危機にある。子どもを守るのは政治家の務めだ。

高齢者支援を充実させるべきだという意見もある。財政赤字の中で少子高齢化が進む社会で、どこまでやれるのか、やれるだけやってみたらいい。しかしどこまで充実させても、「車に乗ってしまったほうが楽だ」と考える高齢者をなくすことはできないだろう。それははっきりしている。ごまかしてダメだ。

高齢者の票を失わないことだけを考えて行動するのは、政治の無責任だ。

75歳以上のドライバーの免許更新の際には、認知症のテストをしているとされるが、手ぬるいのではないか。そうだとすれば、少なくとも毎年更新・半年更新などにするべきだ。

テストや講習の内容充実も精査が必要だろう。認知力・体力だけでなく、運転をやめる決断力があるかどうか、そのような環境にあるかを試すことが必要だ。更新料を大幅に値上げして被害者補償にあてるなどの措置はとれないか。

高齢者対策で、高齢者の事件については特に民事訴訟手続きを迅速に処理する手立てなどはとられているのだろうか。

将来的には、高齢者を想定して、AT者限定免許のように、自動運転車限定免許への切り替えを促す仕組みも作るべきだろう。

篠田 英朗(しのだ  ひであき)東京外国語大学総合国際学研究院教授
1968年生まれ。専門は国際関係論。早稲田大学卒業後、ロンドン大学で国際関係学Ph.D.取得。広島大学平和科学研究センター准教授などを経て、現職。著書に『ほんとうの憲法』(ちくま新書)『集団的自衛権の思想史』(風行社、読売・吉野作造賞受賞)、『平和構築と法の支配』(創文社、大佛次郎論壇賞受賞)、『「国家主権」という思想』(勁草書房、サントリー学芸賞受賞)など。篠田英朗の研究室