「私の履歴書」の書き手による当たり外れが大きい理由

内藤 忍

日本経済新聞の名物連載「私の履歴書」ですが、今月執筆しているのは、脚本家の橋田壽賀子さんです。

Wikipediaより:編集部

この連載には執筆者によって面白さに大きな差があります。政治家、起業家、文化人の連載は面白く、官僚、財界人の連載はつまらないという一般的な傾向があります。橋田さんの連載は、脚本家が書いているだけに、毎回ストーリーが感じられ、思わず引き込まれます。

それ以上に興味深いのが、仕事のやり方に一本筋が通っていることです。

辛口ドラマを得意とし、セリフが長いのが特徴の橋田さんの脚本ですが、ドラマで問題提起をして、視聴者の共感を呼ぶのに必要な要素として、

(1)身近なテーマ
(2)展開に富んだストーリー
(3)リアルな問題点

という3つの要素を持っていれば、必ず視聴者の心をつかむことができるとコメントしています。これには、とても納得感がありました。

また、一緒に仕事をするかしないかを俳優さん、女優さんの場合は「人柄」で決めているのもユニークです。宇津井健さんや池内淳子さんは、人柄が良いからそれを活かす脚本を書いたとしています。

逆に、自分のやり方に合わなければ、躊躇なく辞めてしまう。TBSのドラマ「時間ですよ」では演出の久世光彦さんがアドリブで、ドラマと関係ないコントを入れたことに反発して降板。山口百恵さんと三浦友和さんの初共演で話題になった「赤い疑惑」も超多忙な山口百恵さんのセリフによって脚本が制約を受けるというので、これも降板。自分の脚本が納得できるものにならなければ、例え人気があるものであっても容赦なくやめる。

仕事を断るのはフリーで活動している人にとっては勇気の必要なことです。しかし、そこで自分のやり方を貫いたことが、独自のドラマのスタイルを作り出し、その後の名作の数々を生みだすことにつながったのです。

私の履歴書の面白さは、人生の振れ幅の大きさにあると言えます。官僚や財界人の書いている内容がつまらないのは、レールの上に乗った無難な人生が平板で、ワクワクするような魅力を感じないからです。橋田さんの連載は、月末までまだ3分の1が残っていますが、どんなストーリーを読ませてくれるのか、楽しみです。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2019年5月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。