マイナス金利がもたらす「副作用と副産物」

マイナス金利の影響で、銀行の収益力が低下し、経費の削減が加速してきました。

銀行の収益の多くは、長短金利差によって生まれています。短期金利で預かった資金を長期で貸し出ししたり、長期国債などで運用することで、利ザヤを稼ぐ。しかし、これは長期金利が短期金利より高くないと収益を生みません。円のイールドカーブは日銀の国債買い入れによってフラットになっていて、長短金利差がほとんどなく、銀行が収益を上げられなくなっているのです。

これがマイナス金利の最も大きな副作用です。

地方銀行は、第二地銀を含めて上場している銀行のうち約7割が最終減益となっています。不良債権の処理費用も前期の約3倍に膨らみ、収益力の低下が顕著になっています。経費の削減を進めても限界があります。いずれ経営危機に陥る銀行が出てきてもおかしくはありません。

また、メガバンクも収益改善のために、店舗網の削減に乗り出しました。

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は2023年度までに、店舗数を約180店減らす方針を明らかにしました。約500店舗のうち35%を閉店するという大きな決断です。みずほフィナンシャルグループも500拠点から、30%近い130拠点を削減すると報じられています。

日本は諸外国に比べて、キャッシュレス化が遅れていますが、その理由のひとつが銀行の店舗網の充実があると言われています。今後、銀行の店舗やATMの数が減ると、現金引き出しに手間がかかるようになります。その結果、クレジットカードなどのキャッシュレス決済の比率が高まると予想します。

未だにコンビニのレジで小銭を数えて支払っている人がいますが、本人だけではなくコンビニの店員や後ろに並んでいる人の効率性まで低下させます。マイナス金利によって、銀行の店舗網が削減され、現金を使う人が減ることになれば、国内の決済の効率性が高まるという訳です。

マイナス金利は金融機関の経営悪化という副作用がありますが、思わぬ副産物も期待できるのです。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2019年5月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。