第25回参議院選挙は21日、投開票が行われ、自民・公明の与党が改選過半数を維持した。憲法改正の発議に必要な3分の2には、改憲派の日本維新の会を含めて届かなかった。投票率は48.80%と24年ぶりに5割を切り、過去2番目に低かった。注目の全国32の「1人区」対決は、自民が22勝(野党10勝)と勝ち越した。
アゴラ執筆陣では、音喜多駿氏(維新)が東京選挙区で初当選。太田房江氏(自民)も2期目を決めた。原田謙介氏(立民)が岡山選挙区で次点に終わった。また比例区では、柳ヶ瀬裕文氏(維新)が初当選。再選を目指した藤巻健史氏(維新)、国政復活を目指した中田宏氏(自民)はあと一歩届かなかった。
マスコミ「黙殺」のれいわが政党要件ゲットの快挙
そしてネット注目の山本太郎氏率いる、れいわ新選組は、比例区で2議席が当確(22日午前5時時点)。山本氏は落選したものの、老舗政党の社民党を上回る勢いを見せ、最終得票率でも政党要件(2%)を余裕で超え、4%以上に達した。
れいわは公示前は政党要件を満たさず、諸派扱いとなるため、一般紙やテレビなどの記者クラブメディアでほとんど報道されることはなかったが、ネットでは既成政党と互角の存在感を見せつける異例の事態だった。
元衆議院議員のWEBアナリスト、村井宗明氏の分析によれば、党本部のサイトへのアクセス数は、選挙戦中盤の7月17日時点で野党第1党の立憲民主を上回り、自民、共産、公明に次ぐ4位に浮上。検索流入数に至っては自民に次ぐ高さをみせ、ネット主体で浸透してきた。
街頭活動もSNSを通じて自然発生的に大多数の人が集まる関心を示し、大手マスコミの「黙殺」をものともせず、障害者やコンビニ店のオーナー、派遣社員経験者など、「当事者」にこだわった候補者擁立が、社会の不満層の心をとらえ、共感を広げた。
党首の山本氏の高い知名度と発信力が基軸だったとはいえ、スタートアップ的な政治団体が、既存政党との露出の差が圧倒的な中にあって政党要件を確保したのは、その政治的主張の中身はさておき、政治とメディアの歴史において特筆すべきケースといえよう。
特定枠当選者の受け入れ体制は?
山本氏は特定枠に2人の障害者を宛てたため、自身は落選したが、れいわが「政党」になることが確定した場合、マスコミも取り上げざるを得なくなる。NHKの日曜討論などに山本氏が、党首として出演することになれば、ネットの波及効果が弱い地方部やシニア層にも主張がリーチしやすくなり、次期衆院選や都知事選に向けた本人の動向も含めて注目される。
しかし、特定枠で当選したのは難病のALS患者の舩後靖彦氏と、重度障害者の木村英子氏の2人。議員活動がどこまでできるのか、またバリアフリーになっていない国会側の受け入れ環境の問題も浮上することになる。
週明けから国会事務局は対応を迫られ、当面はこの問題を中心に同党の活動が注目されそうだ。
一方で、この選挙戦中の街頭活動の最中に、山本氏の2013年の初当選時の選挙参謀で、現在は公選法違反で公民権停止中の斉藤まさし氏が党のイメージカラーのピンクと同じ色のTシャツを着用して出現していたことが、ジャーナリストの安積明子氏が選挙ドットコムに寄せた現場ルポで明らかになった。斉藤氏が公民権停止中に選挙活動に「暗躍」していたのか、捜査当局が動くのかも密かな焦点だ。
「ネット選挙」のスペシャリスト、自民・山田太郎氏は20時台で当確
前回2016年の参院選で、ネット主体の選挙活動で野党の比例候補者最多得票の29万票を集めて政界を驚かせた山田太郎氏は、今回自民党の比例から出馬。与党への鞍替えで支持層に変化があるのか注目されたが、NHKが20時台に早々と当確ランプを点灯。3年ぶり2期目の当選を決めた。
山田氏は今回もネットを主体にした選挙活動を展開。緻密なウェブマーケティングのテクニックも駆使しながら、 「自民の比例候補者といえば著名人か組織団体選出か」という従来の概念を覆すことになった。
「N国」議席確保の衝撃
さらに未明の開票作業が進み、NHKから国民を守る党も議席を確保。こちらも選挙前は、政党要件を満たさない諸派扱いで、一般紙、テレビの露出はほとんどなかったが、立花孝志代表が YouTuberとして連日精力的に発信を続け、都市部を中心に広く支持を集めた。最終的に得票率も政党要件(2%以上)に達して衝撃が広がっている。
【更新 13:00】比例区の結果などを追記しました。