不動産投資の最大のリスクは「期限の利益の喪失」

当たり前のことですが、投資には必ずリスクがあります。経済的に成功している人は、リスクを取らない人ではなく、そのリスクと上手に付き合うことが出来る人です。

例えば、不動産投資を始めようとしている人は、空室リスク、家賃下落リスク、地震や火災などの災害リスクなど様々なリスクを想定します。しかし、一旦始めてみると、やる前にあれこれ想像していたこれらのリスクは上手に付き合えば問題ないことがわかります。

空室リスクや、家賃の下落リスクは物件の選択方法を間違えなければ回避できます。災害リスクも保険や事前の立地の調査によってリスクをミニマイズできるのです。、

不動産投資家として成功を収めた人が、リスクとして認識すべきなのは、それらのリスクよりも「期限の利益の喪失」リスクです。

期限の利益とは、金融機関から借入をしている投資家は、予め約束された返済スケジュールに沿って返済をしている限り、金融機関から急に返済を求められることは無いという利益を指します。

ただし、当初の契約に違反する場合、自動的あるいは金融機関からの請求によって、融資金額の返済を求められる可能性があります。これが「期限の利益の喪失」です。

例えば、最近問題になっている「一棟一法人スキーム」や「住宅ローンを利用した投資用不動産購入」などが、金融機関に発覚すると、返済だけでなく、今後の融資に関して門戸が閉ざされます。

「一棟一法人スキーム」とは、複数の法人を立てて、別個に借入を行い、金融機関に与信リスクを過小に見せる方法です。また、住宅ローンの安い金利を悪用して購入した物件に住まずに賃貸するのも、金融機関との約束違反になります。

さらに、期限の利益の喪失は、返済が滞って遅延したときや、物件の差押の場合にも発生します。

そうなると、金融機関からの融資は受けられなくなりますから、直ちに物件を売却して返済資金を作らなければなりません。流動性のない物件だと、現金化できなくなり、資金繰りに窮してしまいます。さらに、その後の不動産投資にも大きな支障が発生します。事実上不動産投資から撤退になってしまうのです。

既に不動産投資を始めている人は、銀行取引約定書と金銭消費貸借契約書を読み返してみましょう。

期限の利益の喪失のリスクは、起こってしまってからでは遅いのです。資産運用は、甘く見て変な小細工をすると、大きなしっぺ返しになって返ってくるのです。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2019年8月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。