朝日新聞の“推しメン”小泉進次郎は小池、石破の轍を踏むのか

新田 哲史

環境相就任直後の処理水対応を巡り、小泉進次郎氏の評判がネット上ではガタ落ちだ。

就任会見する小泉氏(政府インターネットテレビより)

とうとうけさの産経新聞の社説でも諫言され始めたが、それでもマスコミで作られる「国民的人気」は新婚と組閣の影響で健在のようだ。朝日新聞社がこの週末に行った世論調査で、小泉氏は「ポスト安倍」で相変わらずトップに挙げられた。

ポスト安倍、1位は小泉氏 2位は石破氏 朝日世論調査:朝日新聞デジタル

1番手に挙げられるのは、副大臣も経験していない入閣前からのことで、中村仁さんが指摘するところの「小泉進次郎を首相に推す世論の軽さ」そのものだ。

ただ、これまでと様相が少し異なるのは、自民党支持層の反応だ。候補に挙げられた7人の順位は自民支持層でみても変わらなかったとしており、

小泉氏の21%がトップ。2番手の石破氏が14%で全体より低いのに対し、河野氏と菅氏は共に12%で全体より高く、差を詰めている。

といった傾向だそうだ(太字は筆者)。

朝日新聞デジタルより

これに対し、同じタイミングで発表された産経新聞の調査の方では、安倍首相も入れて「次の首相にふさわしいのは?」と尋ねたところ、無党派を含めた全体の傾向で、安倍氏(17.3%)→ 石破氏(16.0%) → 小泉氏(14.3%) → 菅氏(6.3%)→ 河野氏(5.9%)と続いた。そして、注目の自民党支持層の小泉氏に対する支持は、安倍首相(28.4%)の半分の14.2%にとどまった。

しかし、朝日の調査に“いやらしさ”を感じてしまうのは、質問が最初から「安倍晋三首相の次の自民党総裁にふさわしいと思う人」とポスト安倍に限定していることだ。

自民党サイトより

近年の朝日新聞の「次の首相にふさわしい」調査を振り返ると、2015年12月、総裁選直前の18年7月、総裁選後の18年10月に実施している。18年10月の調査からは、安倍首相を選択肢から外しているが、もちろん、安倍首相が党規則で最後の総裁任期(3期)に入ったためだろう。

しかし、安倍氏の総裁「4選」の可能性はまだ取りざたされている。総裁選のルールは、政党の都合で変えることができるので、産経が「安倍推し」メディアというポジションを考慮しても、朝日が「安倍首相の次」に強いこだわりがあるように思えてならない。

当然のことながら、産経調査では小泉支持が控えめだった自民党支持層でも、“横綱”不在の中で選択させられるとなれば、当然、知名度や人気のある小泉氏の数字が高めに出てしまうだろう。

世論調査に定評のある朝日なら、設問設計時にそれくらいの「政治的」意図を働かせているのかと勘ぐってしまう。

そして、安保法制やモリカケで安倍おろしに失敗した朝日としては、2021年9月の総裁任期までに安倍首相が勇退することが待ち遠しく、その後釜にリベラルな志向も見え隠れする小泉氏を据えようという世論を喚起しようと考えているのではないか。

朝日新聞が小泉氏に対してどういうポジジョンを取るのか、当面の「目安」としては処理水の問題でどのような社説を書いてくるかだ。

産経が明確に「前環境相の決意受け継げ」とハッパをかけたとなると、その逆張りで前環境相を猛批判し、「福島の漁民に寄り添え」などと小泉氏を擁護してくるかもしれない。

その中身はといえば、大串博志衆議院議員(元民進党、無所属)のブログのように、安倍政権のエネルギー政策非難に終始するばかりで、結局、なんの解決策も示さないという、「万年無責任野党ロジック」を全面展開するものになるのではないか。

石破氏(編集部撮影)、小泉氏、小池氏(政府サイトより)

振り返れば、安倍首相と敵対しているというだけで、朝日は小池百合子氏や石破茂氏を推し、最後はハシゴを外し、総理を目指す保守政治家の疫病神的な効果を存分に発揮してきた。

(参考)
「いまさら」反小池に舵を切った朝日新聞の社説裏読み(アゴラ拙稿:2017年9月5日)
石破氏は朝日新聞に利用されてすべてを失った(アゴラ 八幡和郎氏:2017年08月05日)

小泉氏も近い将来「ポスト・ポスト安倍」を真剣に目指すのであれば、処理水の問題は朝日の言うことを鵜呑みにせず、産経の苦言を受け入れることだ。良薬は口に苦し。

新田 哲史   アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長
読売新聞記者、PR会社を経て2013年独立。大手から中小企業、政党、政治家の広報PRプロジェクトに参画。2015年秋、アゴラ編集長に就任。著書に『蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた?』(ワニブックス)など。Twitter「@TetsuNitta」