自助と共助こそが減災の基本

今月9日に発生した台風15号による被害が広がっています。
被災された皆さんには心からお見舞いを申し上げます。

千葉県を中心とした被害になっていますが、一部損壊などの住宅被害が4000棟近く出ていますし、何よりも停電が広範囲にわたって続いています。昨日の午前11時半現在で4万9000戸が依然として停電中で、東京電力をはじめとした関係機関が27日までの復旧を目指して復旧作業を進めています。

こうした自然災害時には自衛隊などの政府の対応ももちろん重要ですが、最も頼りにしたい行政と言えばやはりそれぞれの地域の事情を一番よく知っている市区町村ですね。ところが災害時は役所機能も麻痺していますし、職員自体も被災しているケースがあります。

さらに、時代の経過とともに地方公務員の数が減ってきた事実もあります。およそ25年前の平成6年度は328万2492人にいましたが、平成30年度の昨年は273万6860人と55万人が減っています。私が横浜市長をしていた平成14年から21年までの8年間でも20%の減員をしました。人口減少社会に合わせた公務員の縮小は必然で、生産性を上げて効率的な行政運営をしていくということも当然です。

自然災害という緊急時に備えた人員を常に確保していくことはできませんが、人員が減ったから災害対策体制が万全でなかったとしたら問題です。もちろん少なくなった人員でいかに災害時の対応するのかということもありますが、それ以上に災害が起こる前にどういう準備をしておくかが重要だと私は思います。すなわち、災害が起きても、なるべくその被害を小さくする減災という考え方です。

減災は自助・共助・公助というのが原則ですから、災害時にとにかく公務員をあてにするのではなく、地域における共助、そしてみずからの自助が、その減災の基本でもあります。

例えば家屋の被害が最小限になるように、地震や台風への耐震補強や対策、あるいは修繕については行政が仕組みを作り、自らも費用負担をした上で決断をするという自助も必要です。また生存確認などは消防隊や警察、あるいは自衛隊が行ってくれますが、地域における共助を深めておくことも重要です。

他にも行政内部における資源配分の見直しも必要です。例えば昭和40年代の成長期に作った橋やトンネルはどんどん老朽化しています。橋やトンネルがいざというときに崩落してしまっては大変ですから、そうしたことに対する補強・修繕が必要であり、これは時代とともに予算がどんどん増えているわけです。ですから、新しいものをどんどん作るのではなく、そうした修繕や設備の長寿命化に資源配分をしなければなりません。

特に今回の停電は、鉄塔や電柱が倒壊して電力供給がストップしているわけですが、こうした設備を地中化していくということなどについては、電力会社任せではなく、行政がより関わっていくべきだと私は思います。

ただ、いざというときに困るのは自分ですから、そのときのために簡易発電機やあるいは最低限の電池を備蓄しておく、こういう準備は本当に大事だと思います。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年9月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。