日本経済新聞の報道によれば、シェアオフィス大手「ウィーワーク」を展開するウィーカンパニーのIPO(新規株式公開)が延期されたそうです。成長性に対する疑念や、ガバナンス(企業統治)の甘さなどが指摘されたのが延期の原因です(写真も同紙から)。
ウィーワークの利用者ではないので、他のシェアオフィスと比べ、どのくらい素晴らしいオフィスなのかはわかりません。しかし、そもそもの事業業態として、オフィスの賃貸業というのは、それほどスケーラブルなビジネスではありません。
「スケーラブル」というのは、わかりやすく言えば、売り上げが2倍になるのに、コストが2倍かからないということです。売り上げの伸びの割に、コストがかからなければ、規模が大きくなれば、利益が非線形に拡大していくことになります。このようなビジネスなら、先手を打ってシェアを取って規模を拡大することが、正しい戦略になります。
しかし、シェアオフィス事業は賃貸面積が2倍になれば、賃料も2倍かかり、メンテナンスコストも多少は節約できるとしても、劇的に減らすことはできません。実際、ウィーワークは赤字が続いており、規模が拡大してもそれに比例してコストがかかる限り、永遠に黒字化することは困難です。世界中にオフィスネットワークが構築されることによって生まれる、別の新しい価値があるのでしょうか。
ブランド力で差別化できれば、高い賃料を払ってでもウィーワークにオフィスを持ちたいという顧客が生まれ、収益を向上させられます。しかし、コストを最小化したいスタートアップ企業が、ブランド力があるからといって、高い賃料を払う可能性は低いと思います。
他のIT企業がやっているような、顧客データの活用はどうでしょうか。オフィスを借りているスタートアップ企業の情報を集めて、そこから有望な企業を発掘するといったアイディアです。これも、インサイダー取引などのリスクもあり、難しいのではないでしょうか。
このように考えると、やはりウィーワークのビジネスモデルは「テクノロジー企業」ではなく、小洒落た「不動産賃貸(転貸)企業」と考えるのが自然です。そうなると、今までの企業評価は過大だったということになります。
もし、一般投資家が気が付かない「ウィーワークの秘密」がわかっていて、ソフトバンクグループのビジョン・ファンドなどが投資しているとすれば、素晴らしい目利きだと思います。果たして、そんな秘密があるのか、無いのか。それは、もう少し時間が経てば明らかになることです。
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編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2019年9月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。