韓国与党の御用新聞?ハンギョレが23日、何と目下話題が沸騰している「反日種族主義」の共著者の反論を掲載した。
反論を寄稿したのは「反日種族主義」の共著者で、いわゆる徴用工について、先般、国連でも発言したイ・ウヨン落星台経済研究所研究委員だ。
ここ最近ハンギョレは8月11日の書評「強制徴用が“ロマン”であったという本に出会うなんて」を皮切りに、26日「日本極右代弁“反日種族主義”…恥ずかしい日本語版出版」、27日「“反日種族主義”の共同著者イ・ウヨン氏、日本の極右団体から支援受けた」といった、同書と著者を批判するキャンペーンを続けている。
9月に入っても学者や識者を動員して、「反日種族主義」に書かれている項目ごとに反論文を寄稿させ、6日までに以下の3編を掲載中だ。
1日:「“植民地近代化論”は“不都合な真実”でなく“不都合な虚構”だ」
2日:「強制動員ではなく就職?朝鮮人“逃亡者”40%はなぜ」
6日:「稼ぎのいい個人営業者だとは…日本軍慰安所制度作り少女を踏みつけたのは誰か」
(関連拙稿)
①国連シンポで主張された「朝鮮半島出身労働者」研究の中身
②韓国紙が連日猛批判!禁断のベストセラー『反日種族主義』の中身
この23日に掲載されたイ・ウヨン氏の反論は、2日に掲載されたチョン・ヘギョン日帝強制動員&平和研究会研究委員の「強制動員ではなく就職?朝鮮人“逃亡者”40%はなぜ」なる論文に対するものだ。内容を読む限り拙稿①に載せたイ氏の研究の一部が書かれている。
チョン氏の論旨に逐一反論が加えられ、「朝鮮人がリンチによって死亡したという根拠は何か?苦労して調達した労働者を、損害を顧みず殺害したのだろうか?戦時下の日本が無法と野蛮の社会だったという根拠は何か?」など、チョン氏の記述に対する質問もなされている。
拙稿②で述べたように「反日種族主義」の項目は、これまでハンギョレが3回にわたって連載したに限らない。今後もハンギョレの反論寄稿は続くはずだ。そして今回のような著者による反論とそれへの再反論の掲載を期待したい。それでこそ日本統治の功罪についての理解も深まるというものだ。
それにしても発刊以来30年、リベラルで売ってきたハンギョレが、これまで散々腐してきたイ・ウヨン氏の反論を掲載するとは、筆者は心底驚いた。ハンギョレの寄稿といえば、日本人では和田春樹・山口二郎両教授のような、筆者は食事前には顔を見たくない方のものばかりだからだ。
この背景には報道されているようなハンギョレ社内における若手記者らの反乱があるに違いない。報道を見る限りその反乱は、文大統領が疑惑の宝庫チョ・ググ氏の法相就任を強行したこと(チョ・グク事態というらしい)の非を難じた若手の記事を、担当デスクが削除したことに端を発したようだ。
担当デスクは、「この時期に出す記事ではない。記事は無期限保留にした。決定的なのは当該記事がハンギョレの論調に合わない」と担当記者に削除理由を説明した、と報道されている。軍政時代に抑圧された記者らによって民主化と共に発刊したハンギョレは権力に阿らないはずだった。が、文政権には阿ったということか。
“論調に合わない”から…という意味では、日本にも“反乱が起こらないのが不思議”な新聞がある。しかし、この決起を見るにつけ韓国人の方が激し易いのだろう。
となると、週刊ポストが謝罪した韓国人の一部が持つという例の特徴の件も、やはりそれなりに信憑性が高いように思える。
今後ますますハンギョレの記事から目が離せない。
高橋 克己 在野の近現代史研究家
メーカー在職中は海外展開やM&Aなどを担当。台湾勤務中に日本統治時代の遺骨を納めた慰霊塔や日本人学校の移転問題に関わったのを機にライフワークとして東アジア近現代史を研究している。