車両配置でわかるJR東日本の「富裕層ビジネスの理解度」

富裕層を対象にしたビジネスで、忘れてはならないのは「特別扱い」です。一般の人と違った扱いをすることで、特別感を感じてもらう。そこに富裕層は大きな価値を見出し、満足感を感じるのです。

気仙沼と陸前高田を訪問した東北フィールドワークの帰り道は、東北新幹線の一ノ関駅から乗車しました。

改札階に列車の配置と、階段・エスカレーターの位置関係が表示されていましたが、これを見た瞬間、JR東日本は富裕層ビジネスのキモを理解していないなと感じました。

東北新幹線は9号車がグリーン車、10号車が更に高額のグランクラスになっています。料金の高い車両が、ホームの一番端っこの不便な位置になっている意味が理解できません。

一ノ関駅では、料金の最も高いグランクラス乗車客が、エスカレーターからの距離が一番遠く、グリーン車がその次に遠いということになってしまっています。

同じ新幹線でも、JR東海の東海道新幹線にはグランクラスは存在しません。しかし、3両あるグリーン車は、車両編成の中央部に配置され、階段やエスカレーターからの距離が遠くならないように工夫されています。

乗車の時に必ずエスカレーターを使うとは限りません。しかし、降車の時に料金の高い人から優先して改札から出られるようにしておくのは、自然なサービスだと思います。

新幹線や飛行機に乗る人は、時間をお金で買う人たちです。高い料金を支払ったのに、早めに行ってホームの端まで歩かなければならなかったり、到着してから優先して出口に行けるようになっていない。

これでは、乗車時の快適性が高くても、その価値が帳消しになってしまいます。

そもそも東北新幹線には、そもそもグランクラスは必要ありません。ちなみに行きのグランクラスは、利用者ゼロでした。グランクラスは廃止して、グリーン車の車両配置を見直した方が良いと思います。

今のままでは、JR東日本は「富裕層のニーズに鈍感な会社」と見られても仕方ありません。これは観光サービスを提供する会社としては、かなり恰好悪い状態です。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2019年10月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。