(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)
中国の軍備拡張や人権弾圧、貿易の不公正慣行に対して、米国のトランプ政権など民主主義陣営の主要諸国が批判を強めている。そんな中、日本の安倍晋三政権が中国に接近する姿勢が対照的に目立ってきた。中国は日本に対する偽りの微笑外交を進めているが、日本がその術策にはまる懸念さえ感じさせるようになってきた。
「対中融和」を宣言する安倍首相
米国の首都ワシントンで安倍晋三首相の中国に対する最近の言明を読むと、なんとも奇異に映る。日本外交の危機さえも感じられるほどだ。
安倍首相が日本の安全保障の基軸だと宣言する同盟相手は米国である。だが、安倍首相の対中姿勢は米国の超党派とは正反対である。トランプ政権の対中政策を否定するような観さえある。
米国では、中国の無法な対外攻勢を批判すると同時に、対中交流をあらゆる面で縮小するようになった。一方、安倍首相は10月4日、国会での所信表明演説で、中国との「あらゆるレベルでの交流の拡大」を強調した。
さらに安倍首相は同じ演説で「来年の桜の咲くころに、習近平国家主席を国賓としてお迎えし」と誇らしげに述べ、「日中新時代を切り開きます」と宣言した。日本はいよいよ中国と緊密な関係を結ぶのだという融和外交の宣言のようにも響いた。