“超・身を切る改革”イタリア議会が定数の1/3も削減へ

白石 和幸

イタリア議会は10月8日、両院の定数削減案を可決した。これまでの下院定数630議席は400に、上院(元老院)の315議席は200にそれぞれ削減されることになった。両院合わせて345議席、およそ3分の1が次回の議会から姿を消すことになる。因みに、イタリアの人口は6060万人。

agenziami/flickr(編集部引用)

この可決を導いた下院での投票では553票がこの議員削減に賛成し、14票が棄権という結果に終わった。政党間のイデオロギーの違いを超越して大半の議員がこの削減案に賛成したのである。

5分の1の議員あるいは5つの地方または50万人が3か月以内に国民投票による最終審査を問うことを要求できるが、その要求がない場合はこの削減された定数で次回から選挙が実施されることになる。仮に国民投票の実施となると、それは2020年の春の予定になる。その場合は規定された賛成得票率といった条件はなく、賛成が反対を上回るだけで良いということになっている。(参照:eldiario.es

ヨーロッパの議会で英国に次いで最も議員定数が多いとされていたイタリアが勇断を下したのであった。議員の中には一挙に大幅な議員の削減に反対していた議員もいた。特に、五つ星運動と連立政権を担っている民主党の議員がそれだった。民主党は議員の削減よりも選挙法の改正を主張していた。しかし、安定した政権を維持するために賛成に回ったということであった。

そこには五つ星運動と連立政権を誕生させる際に絶対に譲れない条件として同党が民主党に要求したのが、この議員削減案に賛成することであったという背景もあった。(参照:elmundo.es

さらに、民主党からマテオ・レンツィー元首相が離党して新党「Italia Viva」を創設したという背景もあり、民主党議員は政権の安定をより重要視したというわけであった。

コンテ首相も「議会が能率がよくなる。我が国の政治制度の改正の具体的な一歩となる」と指摘して削減案の可決に満足していることを表明した。(参照:abc.es

この議員削減によって10年間に10億ユーロ(1180億円)の歳出の節約ができるとされているが、これには異論があり議会の1期につき5億ユーロ(590億円)あるいは8100万ユーロ(96億円)の節約になるという予測もある。(参照:abc.eselmundo.eslarazon.es

今回の決定に最も喜びを表明しているのは五つ星運動である。この政党は設立の当初からインドのカースト制度をもじって特権階級に甘んじている議員の存在を消滅させるという公約を掲げていた。それが今回の議員削減で達成されたと判断しているからである。

因みにヨーロッパの主要国の人口と議員数を以下に比較する。

スペイン 人口4670万人、定数615議席(下院350議席、上院265議席)

フランス 人口6700万人、定数925議席(下院577議席、上院348議席)

英国 人口6600万人、定数1426議席(下院650議席、貴族院776議席)

(参照:eldiario.es

これらと比較すると日本は人口1億2600万人に対し定数710議席(衆議院465議席、参議院245議席)ということで、むしろ議員の数が少ないということになるのだが、逆にヨーロッパの定数が多すぎるという結論の方が正当に思える。

白石 和幸
貿易コンサルタント、国際政治外交研究家