野党は今度は首相主催の「桜を見る会」を追及するらしいが、別に違法性があるわけでもない。こんな会に公平性を求めてもしょうがない。誤解を招くというなら、来年からやめても国政には何の支障もない。
それより問題は、国会で野党が法案も予算案も議論しないで、こういうスキャンダルばかり取り上げることだ。その理由は単純である。マスコミがそれしか報じないからだ。
細野豪志氏もいうように、マスコミは野党の政策論を取り上げない。その理由も単純である。読者が興味をもたないからだ。政策論はわかりにくく、どうせ野党の政策なんか実現しない。
それに対して金銭スキャンダルは誰でもわかる。政策論争で倒れた政権はないが、田中金脈事件やリクルート事件で内閣は倒れた。政策で自民党と霞ヶ関に勝てない野党が対等に戦えるのは、スキャンダルだけなのだ。
マスコミは本質的に娯楽である。国会はプロレスと同じ八百長なので、勝負には意味がない。見せ場は失言が出たり審議が止まったりする騒ぎだ。野党もそれがわかっているから、NHKの国会中継が入る予算委員会では派手に暴れ、審議が止まると「戦果」になる。
「政権交代がないことが野党がスキャンダル追及に走る原因だ」といわれるが、二大政党が交代した帝国議会でも、議会の最大の話題はスキャンダルだった。それも普通選挙になってからひどくなった。それをあおったのは新聞だった。
政策に知識も興味もない有権者が政治家を選ぶ普通選挙ではポピュリズムは避けられないが、国会がスキャンダルで埋め尽くされるのは日本の特異現象である。これはマスコミで社会部が強いからだ。
CNNやBBCを見ればわかるように、海外の全国ニュースでは社会部ネタがトップを飾ることはほとんどない。事件・事故はローカルニュースである。そもそも社会部というセクションが存在しない。
ところが日本ではサツ回りが多いため、記者の半分以上は(地方を含めて)社会部である。予定物の多い政治部や経済部に対して社会部は派手な事件が多く、興味を引きやすい。政治的には小さな森友・加計のような事件も、社会部が参入すると大きくなる。
これを野党が国会で取り上げるとマスコミは大きく報じるので、野党は社会部ネタばかりやるようになる。これは自民党にとっても都合がいい。野党に政権担当能力がないことを国民に印象づけられるからだ。
だから今の「国対政治」は与野党にとってナッシュ均衡(それを離れると不利になる状態)なので、当事者がこれを変えることは期待できない。失うべき既得権のない維新のような「第三極」に期待するしかないだろう。