2012年12月に第2次安倍晋三内閣が発足して、間もなく7年になる。最初は金融緩和による「デフレ脱却」を掲げていた安倍首相も、最近はほとんど金融政策に言及しなくなった。その代わりに出てきたのが財政出動だ。12月上旬には「真水で10兆円」の経済対策がまとまる予定である。
これは安倍首相の指示によるもので、自民党の二階俊博幹事長は当初「事業規模で10兆円」といっていたが、公明党との協議で(直接の財政支出だけの)真水に変わった。これは第2次内閣の発足した2012年度以来の大型補正予算で、安倍政権はバラマキ財政に回帰しているように見える。
「財政と金融の協調」に踏み出した日銀
かつて財政支出は無駄づかいの温床と批判され、バラマキ公共事業は自民党政権の腐敗の象徴だった。その反省から景気対策は金融政策でやるのが最近の傾向だったが、ゼロ金利の「流動性の罠」に陥って金融政策がきかなくなり、世界的に財政政策が改めて注目を浴びている。
そのトップランナーが日本である。日本銀行の異次元緩和のおかげで長期金利までマイナスに沈み、財政出動はやりやすくなった。MMT(現代貨幣理論)のようなバラマキ理論が受けるのも、こういう背景があるのだろう。
日銀の黒田総裁も11月5日の記者会見で「財政と金融政策の協調を求める声が(日銀の)政策委員会内の一部にもあるか」という質問に対して、こう答えた。
かりに政府が必要に応じて財政政策を更に活用されるということになれば、当然のことですが、財政・金融のポリシーミックスという形で、より一層、財政政策あるいは金融政策が単独で行われる場合よりも、より効果が高まるということは、その通りだと思います。
これは従来の黒田総裁の発言に比べると、かなり大きな軌道修正である。これまで財政について質問を受けると、彼は「財政規律は非常に重要だ」などと答え、日銀の量的緩和が財政規律を緩めているという批判に反論してきた。
ところが今回は、日銀が財政赤字をサポートしているとも受け取れる発言をしたのだ。それを彼は「ポリシーミックス」と呼んでいるが、これは昔のポリシーミックスとは似て非なるものだ。