ライアン航空の航空券は非常に割安になっているが、それに付随して座席予約と手荷物の機内持ち込みには料金を徴収する。更に機内販売などの売上を含めると昨年4月から9月までのこれら付随したものの売上は12億9000万ユーロ(1522億円)、今年同期は16億5400万ユーロ(1952億円)と発表された。この金額はライアン航空の全売上のほぼ30%を占めることになるという。(参照:elespanol.com)
ところが、今年5月に同機を利用してブリュッセルに向かおうとした一人の女性が10キロのキャリーバッグを機内に持ち込もうとしたら彼女の席はプライオリティーではないということで20ユーロ(2700円)の追加料金を請求された。旅行を中止できなかったので仕方なく払った。しかし、彼女は5月にそれを不服としてマドリードの法廷に訴えたのであった。
その判決が先月下されて法廷は彼女の不服を認め、ライアン航空に対し20ユーロの返済並びにこれまでの利息を彼女に支払わねばらならない義務があるという判決を下したのである。
この判決を下した判事は「それは小さなサイズのバッグで、その中には衣類や個人使用物を入れていたということでそのサイズと重量から機内に持ち込んで座席の上部に用意された収納棚に入れると当人は決めた」と述べた。
更に「これに関係して欧州裁判所の判決でチェックインする荷物としない荷物の違いを指摘している。前者は必要不可欠なものではないものということからそれを輸送するということで料金は徴収できる。それとは異なって手荷物の場合は必要不可欠なものだということから航空会社はそれに対して搭乗券の料金以外に如何なる追加料金も請求することなくそれを輸送する義務がある」と指摘したのである。
それに追加して判事は「チェックインされた荷物の場合はそれを輸送する燃料も必要で、チェックインカウンターでチェックインしてから本人の手元まで渡されるまでそれを監視し保護する費用が発生する。その反対に手荷物の場合は航空会社はそのような費用は負担しなくて済む」と付言したのであった。(参照:lavanguardia.com)
ライアン航空は昨年11月から無料で機内持ち込みが出来るものを小さなバッグやリュックサックだけに限定、それまで無料とされていた手荷物バッグなどはその対象外とし、プライオリティーの席以外は料金を徴収するとした。この決定は今回の判決からだと違法だと判断されるようになった。(参照:elpais.com)
今回の判決より以前にライアン航空に対してイタリアは同航空に対して罰金を科した事件が今年2月に起きている。イタリアの規制当局(AGCM)はライアン航空とウィズエアーに対して前者に300万ユーロ(3億5400万円)後者に100万ユーロ(1億1800万円)の罰金を科したのであった。
その根拠になったのは手荷物バッグは航空サービスにおいて本質的に必要な要素であり、それは如何なる追加料金もなく受け入れられるべきものだとした。イタリアではそれまでライアン航空は5から25ユーロの追加料金を徴収していた。
勿論、ライアン航空は規制当局が空の安全性に関係してそのような決定を下す権利はないとして控訴すると表明した。(参照:elpais.com)
今回の判決からライアン航空は手荷物の機内持ち込みを以前のように無料にする意向は全く示していない。寧ろ、現状のポリシーを維持して行く方針のようだ。
何しろ、ヨーロッパで航空路線でライアン航空ほど緻密な空路を持っている航空会社は存在しないからだ。例えば、第3都市から第4都市への移動もライアン航空以外の航空会社では路線として備えていないが、ライアン航空だとそれが出来るといったメリットを独占的にもっていることから利用客は同航空の決定に不満でも利用せざるを得ないのである。
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白石 和幸
貿易コンサルタント、国際政治外交研究家