首相を背任罪刑事告発
首相主催の「桜を見る会」をめぐり、大学教授ら13人が安倍首相を背任罪で1月14日東京地検に刑事告発した。
告発状によると、安倍首相は主催者として「桜を見る会」の支出を予算内に収めるべきにも拘らず、自らのために後援会員など大勢を招待し、過去5回の「桜を見る会」で大幅に予算を超過させ、国におよそ1憶5000万円余りの損害を与えたとしている。
背任罪の犯罪構成要件
背任罪の犯罪構成要件は、「(1)他人のためにその事務を処理する者が、(2)自己若しくは第三者の利益を図り、(3)又は本人に損害を加える目的で、(4)その任務に背く行為をし、(5)本人に財産上の損害を加えたときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」(刑法247条)というものである。
背任罪は到底成立しない
- (1) については、「桜を見る会」は安倍首相主催の行事であるから、安倍首相が「他人のためにその事務を処理する者」には該当しない。よって、そもそも犯罪構成要件には到底該当しない。
- (2) については、「桜を見る会」招待者選定の最終的な法的決定の権限は安倍首相にはなく、法的にはあくまでも、内閣府及び内閣官房にある。したがって、仮に安倍事務所が招待者の推薦をしたとしても、法的には単なる推薦に過ぎず法的拘束力は全くない。よって、安倍事務所には招待者選定につき最終的な法的決定の権限がないから、法的に安倍首相が「自己若しくは第三者の利益を図った」とは到底認められない。
- (3) については、法的に「本人に損害を加える目的」を認めるに足りる事実も証拠も到底存在しない。
- (4) については、「桜を見る会」は安倍首相主催の行事であるから、法的に「その任務に背く行為」にはそもそも該当しない。
- (5) については、「桜を見る会」は安倍首相主催の行事であり、安倍首相には内閣総理大臣としての行政裁量権があるから、法的に「本人に財産上の損害を加えた」とは到底認められない。のみならず、「桜を見る会」の支出は毎年の決算で国会承認されているから、法的に「損害を加えた」とは到底認められないことは明らかである。
- (6) よって、安倍首相について法的に「背任罪」が到底成立し得ないことは明白である。
安倍首相は憲法75条により訴追されない
のみならず、安倍首相は憲法75条により在任中は訴追されないことは明らかである(宮沢俊義著、芦部信喜補訂「全訂日本国憲法」1978年日本評論社)。
「背任罪告発」は誣告罪の可能性がある
以上の通り、安倍首相には「背任罪」が到底成立しないにも拘らず、敢えて告発した13人の告発人らは刑法172条の「誣告罪」(3月以上10年以下の懲役)に該当する可能性がある。
加藤 成一(かとう せいいち)元弁護士(弁護士資格保有者)
神戸大学法学部卒業。司法試験及び国家公務員採用上級甲種法律職試験合格。最高裁判所司法研修所司法修習生終了。元日本弁護士連合会代議員。弁護士実務経験30年。ライフワークは外交安全保障研究。