韓国の「不買運動」はウクライナ式で?

韓国の中央日報(日本語版)は29日、「不買運動の余波」という見出しで、日本の有名なチョコレートメーカー「ロイズコンフェクト」が韓国での営業を停止し、閉鎖するというニュースを報じた。

▲日本商品不買運動を煽る文在寅大統領(韓国大統領府公式サイトから)

中央日報は「ロイズコンフェクトは韓国事業撤退の理由について直接的な説明はしていない。しかし、業界ではロイズが『日本旅行に行って買ってくる高級チョコレートブランド』として広く知られているため、昨年から続く不買運動の影響で撤退するという見方が出ている」と報じた。

「不買運動」は戦後最悪の関係といわれる日韓関係が色濃く反映している。慰安婦問題、元徴用工問題、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄騒動などで険悪化した日本との関係に対し、反日運動を煽る文在寅大統領らの暗黙の支持を受けた日本製品への不買運動が韓国内で広がってきた。

ロイズコンフェクトは韓国の「不買運動」の唯一の犠牲者ではない。韓国市場に進出している日本企業、会社は程度の差こそあれ、影響を受けてきた。昨年9月には、日産自動車が韓国市場から撤退することを検討していると、英フィナンシャル・タイムズ(FT)が報じている。韓日関係の悪化で日本車の販売が急減したことへの対応措置だろう。

ところで、「不買運動」は韓国だけの専売特許ではない。アルプスの小国スイスでも今、起きているのだ。もちろん日本商品のボイコットではなく、過去の歴史問題が絡んだ運動でもない。

スイスのニュース配信サービスの「スイス・インフォ」(1月26日)によると、スイスのチョコレートブランド「レダラッハ」創業者一族が、同性婚や中絶の権利に反対する活動を支援しているとして、性的マイノリティ、LGBTQ団体などがレダラッハ社のチョコレートの不買運動を展開してきたというのだ。

少し説明する。ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーが昨年9月、レダラッハ社の前CEOのユルグ・レダラッハ氏がチューリッヒで開催された中絶反対デモの主催者側であり、同性婚に反対するキリスト教団体の役員を務めてきた人物だと報じたことから、性的マイノリティのLGBTQ団体とその支持者がレダラッハ製チョコレートの「不買運動」を始めたのだ。彼らは昨年10月、バーゼルの店舗に悪臭弾を投げこみ、12月にはツークの店舗前で、同性カップルが抗議の一環でわざと抱き合い、キスをするなどの嫌がらせをしたという。

それに対し、現CEOのヨハネス・レダラッハはNZZ・アム・ゾンタークのインタビューで、「レダラッハで働く人にホモフォビアはいない。弊社では同性愛者の従業員が働いている。胎児の生命のために戦うことで、私は女性差別者だと糾弾されているが、私は女性差別主義者ではない。管理職の60%は女性だ」と説明し、LGBTQの批判に反論している、といった有様だ。

レダラッハ氏が自殺ほう助、結婚前の性交渉、婚外交渉、同性婚、ポルノ、映画「ジーザス・クライスト・スーパースター」や「ハリーポッター」などに反対するキリスト教団体の役員であることがLGBTQ支持者の反発を呼んでいるのだ。

「不買運動」は韓国とスイスだけでみられる現象ではない。ウクライナでもちょっと変わった「不買運動」が展開中だ。ウクライナではロシアにクリミア半島を奪われて以来、国内でロシア嫌いが更に拡大。ポロシェンコ前大統領時代、日用消費品を扱う店舗ではロシア製商品にはわざわざ「ロシア製」と明記し、ウクライナや他の欧州諸国からの商品には「欧州産」というレッテルを貼って陳列されている。消費者は自分の判断で、ロシア製を買うか、欧州産を買うかを決定できる。もちろん、クリミア半島をロシア側に奪われたウクライナ国民はロシア製を避け、欧州製を選ぶ人が多いことは言うまでもない。

韓国やスイスのLGBTQ団体と異なる点は、ウクライナはロシア商品「不買運動」を国民には呼び掛けていないことだ。ただ、商品をロシア製かウクライナ・欧州産かを明記して店舗に並べているだけだ。

ウクライナ式「不買運動」は、韓国やスイスのLGBTQ式のように声を張り上げたやり方よりは数段センスがいい。韓国でも韓国製と日本製というレッテルを貼って売れば、対日関係をこれ以上悪化させることはないだろう。値段や品質で日本製が欲しい韓国国民も少なくないはずだ。上から「日本製を買うな」といった「不買運動」は政治的なプロパガンダ色が強く、国民から反発を買うケースが出てくる。

韓国の「日本製品不買運動」のやり方は韓国のお隣、北朝鮮の独裁的、強権的なやり方を想起させる。同民族とはいえ、韓国民は北朝鮮流の不買運動といわれれば不愉快だろう。「不買運動」をしたい時は、消費者の選択権を尊重するウクライナ式でやってもらいたいものだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2020年1月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。