「教育情報化推進法」成立記念シンポジウム、続編です。
主催の2018年5月に発足した超教育協会は、31団体が参画、傘下に8000社の企業があります。石戸理事長から、AI、クラウド、著作権、ブロックチェーン、VR、プログラミングのWGチームの報告と、高校・大学といった枠を超えて学校のあり方を考える超学校WGの説明がありました。
議論には超党派議連の衆参両議員、文科省、経産省、総務省の代表に加え、横尾俊彦佐賀県多久市⻑、光村図書出版森下耕治さん、COMPASS神野元基CEO、Google for Education Japan代表小出泰久 さん、アマゾンウェブサービスジャパン大富部貴彦さんに参加いただきました。
長年この分野に携わってきた教科書会社と、振興テクノロジー企業の代表、そしてGAFAのGAが揃い、政官産学の意見交換が行われたわけです。刺激的です。
しかも冒頭、法律成立を祝う鏡開きが盛大に行われ、振る舞い酒をいただきながらの議論。
否応なく盛り上がりました。
横尾市長は全国ICT教育首⻑協議会の会⻑でもあり「自治体の整備財源不足、人材不足などの解決策を提示してきた」と言います。「今後の課題は、低価格デバイスなど全国一斉普及を促す国としての支援策であり、調達、規制、クラウド活用に向けての改革が必要」とします。
光村図書の森下さんは「デジタル教科書とデジタル教材(動画・朗読・ワーク・QR等)の一体活用が有効」としつつ、グループでの利用実態を紹介しました。いま教材として扱われている動画などの部分を正規の教科書にしていくべきことは、国会議員からも指摘されていましたね。
COMPASSの神野さんは、AI型タブレット型教材Qubenaによる麹町中学校での経済産業省「未来の教室」事業について説明。
「中学校1年生の単元62時間が38時間に短縮でき、残りの28時間でSTEM学習や2年生の単元も実施できる。」
目覚ましい成果を見せています。教育もテックの時代です。
昨年の夏、Googleは教育へのICT投資に向け日本で組織を作り、廉価な端末に取り組んでいるそうです。
「Chromebookは米教育現場の70%は、世界の教育現場50%で採用されていて、低価格でセキュリティを担保したプラットフォームを提供していきたい」と意気込みを示しました。
AWSからはクラウドの説明。
「全世界の教育機関で活用されていることに加え、米国の教育系スタートアップのトップ20社の内19社がAWSを使用している」とのこと。
クラウドの仮想化技術でネット接続を分離してセキュリティを高めること、クラウドスキル習得のためのプログラムを提供していることも紹介されました。
登壇者は日本の教育情報化は遅れているが伸びしろはあるとの認識で一致。光村図書森下さんは「デジタル教科書の普及率が50%を超えた一方、生徒1167万人にPCが217万台」という現状を報告。BYOD導入の必要性と、前提としてのクラウド活用について討議されました。
COMPASS神野さんは「中国・インドが人口増と教育の低品質のためEdtech企業が急速に生まれている一方、日本・アメリカは教育の質が高いのでEdtech企業の求められている点が異なり、中国・インドに比較し難しい」と指摘しました。産業としては世界市場をどうみるかの視点が重要です。これまでこうした議論が不足していました。
この法律で日本はフロントランナーに立てるか?
神野さん「今なら立てるが5年たったら遅い」。
大富部さん「生徒が使いたい物を使いたい時に使えて、民間が参入できる環境を作ることが重要。」
小出さん「この3年が勝負。1兆3000億円投資すれば、1300万人の生徒に一人一台PCが普及する。」
歯切れよし。
経産省・浅野課長「テクノロジーを使って、なぜ?どうして?と言える子供を育てることが重要。」
森下さん「学校・家庭・塾などが教科書・教材と教育サービスの学習履歴データを共有したサービスと連携していくことになっていく。」
AI・ビッグデータの新技術にも期待します。
盛山議員「熱い、痛い、など実際に経験することの重要性と、ICTを活用した教育とのバランスを取っていくことが大事。」
中川議員「現場の人材育成とICT機器を使いこなす環境づくりを行いながら、進めていく我々の意思が重要だ。」
御意。民間はがんばります。政官のご支援も期待します。よろしくどうぞ。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2020年2月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。