日本株のこれからは日銀が決める!

内藤 忍

コロナウィルスへの懸念から、世界の株式市場は相変わらず不安定な動きになっています。昨日のアメリカ株式市場も大きく下落し、今日の日本株式市場もマイナスからのスタートです。

(日本経済新聞電子版から)

図は日本経済新聞電子版に掲載されていたものですが、日本株の買い手と売り手を主体別に時系列で表示したものです。これを見ると、世界的に連動しているように見える株式市場ですが、日本の市場だけ特異であることがわかります。

2012年末から個人はずっと日本株を売り越していることがわかります。その時に買い手に回っていたのが、海外投資家と日銀です。この時期は、アベノミクスで株価は上昇基調でしたが、個人は上がっている中で売り抜けたことになります。

そして、海外投資家の買い越し額も徐々に小さくなり、現状は個人投資家の売り越しを日銀が買い支える構造になっています。

今後、海外投資家も売り越しに転じれば、買い手は日銀だけになってしまいます。つまり、これからの日本株の動きは、日銀次第になってきているのです。

しかし、日銀がETFの購入を通じて日本株式の保有を増やすことには大きな問題があります。

1つは、価格形成が歪められ、マーケットメカニズムが働かないことです。日銀は企業の本質的な価値に基づいてETFを購入するのではなく、株価を維持することを目的に購入を行います。これは企業の本質的価値よりも株価を過大に評価することにつながり、市場価格への不信感を広げます。

そして、もう1つの問題は、日銀のバランスシートリスクが高まることです。

ETFを購入すればするほど、日銀の株式保有額が増え、株価の下落によるマイナスが大きくなります。日銀の平均購入コストは日経平均で18000円台と言われています。しかし、現状の株価水準でも購入を続けていますから、持ち値は少しずつ上昇しています。

日経平均が2万円を割れるような状態になれば、日銀が保有する日本株式が含み損になるリスクが高まります。中央銀行のバランスシートが棄損すれば、日銀券の信用が低下し、円の価値が下がることになります。

今のところアメリカの金利低下による金利差縮小から、為替は円高に振れています。もし、株価が下がって、円安トレンドに変わることがあれば、日本人にとってコロナショックより恐ろしいことが始まる可能性があります。そうならないことを祈りつつ、最悪の事態に備えておくことをお薦めします。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年3月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。