東日本大震災から9年、原発に賛成?反対?

中田 宏

昨日3月11日で東日本大震災から9年です。

今年は新型コロナウイルスの感染拡大でまた新たな危機に直面をしています。
昨日の日経平均株価は1万9416円06銭と前日比451円06銭でした。
先週の株価変動に比べると今週は少し落ちつています。

とはいえ、こうした新型コロナウイルスの影響を受けて、今年は政府主催の東日本大震災の追悼式は中止になっています。

東日本大震災の被害は大なり小なり、多くの都道府県にまたがっていますが、最近では、宮城県、岩手県、福島県を被災3県と呼んでいます。この3県の製造品出荷額はほぼ震災前の水準まで戻りました。すなわち、経済的にはかなり戻ったということです。またJR常磐線は今度の土曜日、14日に全面開通するなど防波堤などを含めたインフラの復興はかなり進んできたと言えます。

ただ一方で、福島県の住民を中心にまだ4万8000人もいらっしゃいます。もし自分がいまだに避難生活をしていると考えたら、まだ震災は終わっていないというふうに思わざるを得ません。

特に原発事故のその後が続いている福島県から3万914人と住人が県外で避難生活を送っていらっしゃいます。これから先の廃炉作業は30年以上かかると見込まれています。

9年前の原発事故以来、「原発」は国民的な関心事になり、多くの人が自分事のように考えるようになりましたし、私のような立場の者には「あなたは賛成なのか、反対なのか」と問うてくる人も本当に数多くいました。

反対派の何よりの理由は、今回と同様、万が一事故が起きた場合の危険性ですね。そして賛成派は他の電源に比べてCO2の排出量が少なく、また他の電源に比べて安く供給できる経済的なメリットも挙げています。ただ、安く供給できたとしても万が一事故が起きた時のコストを考えれば高いという反対派もいます。

さて私の考えは、原発をできるだけ少なくして、再生可能エネルギーなどを増やしていくべきだと思います。やはり資源そのものがない国としては再生可能エネルギーなどをどんどん増やしていくべきだとも思います。

ただ、単純な反原発という理由で原発を無くしてはいけないとも思います。それでは技術の継承ができなくなってしまいます。ただでさえ、原発が悪というような論文が増えることによって原子力を学ぶ学生や研究者が減ってきました。昭和40年代、50年代は未来の技術ということで、原子力分野に進む若い人が多かったわけです。技術者がいるということは将来に禍根を残すということになります。

また、国内外で原発事故が起きたと時に対応する人がいない、専門家がいないことになってしまいますし、また原子力の新たな平和的な利活用ということもできなくなってしまいます。すなわち技術、国力を失ってしまいます。

9年前の福島の事故は津波で原発がやられたのではないんです。電源が喪失された、すなわち二重、三重に非常電源というものがきちっと用意されていれば防げたわけです。またこの事故は、緊急時の政府と政治の指揮、命令についてや、東京電力の本部と現場という組織のあり方についての教訓でもあります。

そういう意味で現在上映されている福島フィフティという映画、これは原発の賛否を超えて観ておくべきだと私は思います。

この原作は私もよく知る門田隆将氏なんですけれども、これを原発事故発生の翌年に執筆しているのはすごいことだと思います。私、原作を知っていますが、映画はまだ見てませんが、必ず観に行きます。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年3月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。