スペインのフェリペ6世国王は父親で前国王ファン・カルロス1世が2つの基金「Lucum」と「Zagatka」が隠し持っていた預金の相続を拒否することを3月15日、明らかにした。更に、これまで国家予算の中から前国王に支給されていた年間194,232ユーロ(2300万円)も今後は支給されないことを公表した。(参照:eldiario.es)
国家予算で国王に充てられた予算以外の金銭活動は禁止されている。今回の発見が正しいとすれば、前国王は国王として在位中に違法なビジネス活動をしていたことになる。
フェリペ6世がこのような決断をしたのは次のような背景があった。最初、3月5日に前国王の愛人だったコリーナの弁護士事務所Kobre & Kimから前国王が隠し持っているLucum基金の口座にフェリペ6世国王が相続人となっていると王室に通知して来た。同月14日には英国紙『The Telegraph』がLucum基金の口座の隠された名義人はファン・カルロス前国王で、その次にフェリペ6世が相続人となっていることを報じた。2008年に1億ドル(106億円)がサウジアラビアの当時国王アブドゥラ・ビン・アブドゥル・アズィーズから振り込まれたのはこの口座であった。(参照:eldiario.es:elpais.com)
そこでフェリペ6世は早速その翌日15日、この基金の口座に自らが相続人となっていることを破棄したというわけである。フェリペ6世が以前からこの口座の存在を知っていたのか否か、また国王が相続人となっていたことを知っていたのか否か、という二つの疑問はまだ明確にされていない。しかし、少なくとも相続人を破棄したということは、この基金の口座の存在については容認したことになる。
また3月21日にはスペイン王室はコリーナの弁護士事務所に宛ててフェリペ6世並びに王室はそのような口座の存在は知らされていなかったと書面にて通知した。
もう一つ隠し基金はリヒテンシュタインで創設された「Zagatka」という基金だ。その口座がジュネーブのスイス・クレジット・バンクで2月24日に見つかった。それを検出したのはジュネーブのイヴ・ベルトサ検事だ。同検事はこの口座の隠された名義人が同じくファン・カルロス前国王であると見ているのだ。(参照:okdiario.com)
Zagatkaの口座の名義人はアルバロ・オルレアンズという人物で、彼は前国王の親戚にあたる人物だ。例えば、前国王がプライベートジェット機を利用する時にこの口座から支払いが行われている。因みに、国王が利用するプライベートジェット機は空軍基地トレホンを利用している。その方が監視のコントロールがないからである。なぜ、オルレアンズが彼の口座から前国王の旅行費用などを支払わねばならないのか。それはこの口座が前国王のものだからだというのは明白である。
ところが、この口座の2人目と3人目の相続人はアルバロ・オルレアンズの二人の息子となっているが、4人目の相続人がフェリペ6世となっていたのである。ということで、フェリペ6世はこの口座の預金も今回破棄したということだ。(参照:elpais.com)
一方のファン・カルロス前国王は昨年5月27日、公人としての公式な場での王家の代表代理を務めることから一切退任することを発表した。
しかし、イヴ・ベルトサ検事の調査は依然進められている。前国王が脱税や資金洗浄などに関与していると見ているからだ。
コロナウイルス感染のニュースがスペインのメディアで今騒がれているため、王家の今回のスキャンダルは王家にとって都合良く第一面のニュースとして取り上げられていない。