15年前から待ち続けたファンはなぜ、FF7リメイクに失望したのか?

黒坂 岳央

こんにちは!黒坂岳央(くろさかたけを)です。
※Twitterアカウントはこちら→@takeokurosaka

テレビゲームでかつて絶大な人気を誇った「ファイナルファンタジー」シリーズの第7作「FF7」のリメイクは近年まれに見る「販売不振」で終わる可能性が見えてきた。週間販売数はわずか70.3万本。オリジナルのFF7は203.4万本も売れたのに、である。新型コロナウイルスの影響で、という声もあるが任天堂の発売したあつまれどうぶつの森は、発売3週目で累計300万本を突破するという破竹の勢いで、「時期」は理由にならないだろう。

FF7公式サイトより

筆者はオリジナルのFF7はもちろん、このリメイクも非常に楽しみにしていたし、もちろんすぐに手に入れてプレーした。

今回は熱狂的なファンの一人として、この「異常事態」について思うところを述べていきたい。

ファンは15年も前から待ち続けた

最初に「FF7が最新機種でリメイクされる」というウワサが立ったのは2005年のことだ。オリジナル作品が発売されたのは、1997年でプラットフォームはPS1。当時、本作は熱狂的なFFファンに迎えられた。それまでのスーパーファミコンからグラフィックを完全に一新、当時のPS1の性能を限界まで引き出した美麗のグラフィックに引き込まれ、徹夜でプレーをしたのは筆者だけではないはずだ。

そんな名作が2005年に「PS3で再現するとこのようなグラフィックになる」と電撃的にムービーが公開され、「まさかリメイクで登場するのでは?」と高まる期待はネット上に駆け巡ることとなったのだ。筆者は2005年頃、遅れて大学入学を果たして人生の巻き返しを図るタイミングで忙しく、そこまで意識しなかったものの「へぇ、リメイクされたら面白そうだな」くらいに思ったことを覚えている。

その後、何度も開発延期が続きながら、2020年にようやく発売した。「もしもFF7をPS3で再現すると…」という動画の公開から15年が経過していた。

ファンは「分作」に心を打ち砕かれた

お断りしておくが、筆者はFF7リメイクを非難するつもりはない。むしろ、待ったかいあって非常に楽しんでプレーしている。だが、自分のようなプレーヤーは稀な存在であり、むしろ多くのゲーマーは失望に失望を重ねていることだと思う。

まず、良くなかったのは「分作」だということだ。つまり、1万円近くもする販売価格にも関わらず、この作品を買うだけでは物語は完結しないのだ。プレーした人だけが分かる話で恐縮だが、FF7リメイクが収録しているのは、「ミッドガル脱出」という部分までだ。

これは序盤も序盤、オリジナル作品はディスク3枚組だったが、その1枚目の序盤が終了するところまでである。実際には、リメイク版は内容を大きく膨らませているので、そこは申し分ないのだが、ファンは間違いなくこれに絶望したことだろう。「これ完結するのいつになるのか?」と。

完結する頃にはみんなおじいちゃんになる

第1作目が出るまで15年も待ち続けたのだ。それでオリジナル版のディスク1の序盤で終了。このペースだと完結するまで10年以上かかりそうだ。もちろん、開発現場の事情を考えれば、システムやグラフィックなどは流用できるのでそこまでかかることはないだろう。

だが、もうファンはこの作品に待ち疲れた。みんなFF7が大好きだ。だけど、完結まで10年、15年、いや20年かもと思うと絶望したのだ。オリジナル版を熱狂的にプレーした世代は筆者を含め、30代になっている。このリメイクが完結するのは、もしかしたら還暦を迎える頃かも知れない。

バカな。これだけエンタメがあふれるこの世で、いくらFF7が素晴らしい作品といえども、イチ作品だけを追い続けるファンがいるだろうか。

ゲームショーの「スクエアエニックス」ブース(Kentaro Ohno/flickr)

スクエニは売り方を誤ったか?

オリジナル版は「トバルNo.1」というソフトを買うと、「FF7」の体験版がついてきます、という売られ方をした。アコギな商売だと思いつつも、そうしなければこの超大作の体験はできない。当然、筆者もお年玉を使って購入した。

今回のリメイクも事前に体験版が配布された。しかも抱き合わせではなく、ネットから無料でダウンロードできた。当然、ダウンロードしてプレーしてみた。想像の10倍以上良かった。ネットで評判をググると、前評判は間違いなく高かった。他のプレーヤーも楽しんでいるみたいだ。きっと売れるだろう。なんせこんなに面白いのだから。

だが、結果は失敗した。FF15の販売本数以下だ。もちろん、名もなきゲームとしては週間販売図数70万本というのは凄まじいメガヒットである。だが、これはタダのゲームではない。世界中のゲーマーなら知らない人はいない、あの「FF7」のリメイクなのだ。「出せば売れる」が神話になったFFやドラクエの時代に懐かしさを感じるのは、筆者が年老いた証拠だろうか。

作品としては間違いなく素晴らしい。筆者は何回体験版をクリアしたか分からない。面白かった。思うに、敗因はビジネスの戦略ミスだ。スクエニは売り方を間違えた。10年以上かけて「遊べるのは序盤まで。続きは気長に待っててね」とプレーヤーをお預けさせるべきではなかったのは明白だ。せめて後続作品の販売スケジュールを公開するべきだろう。FF15はダウンロードコンテンツが結局中止になってしまった。それで信用を失っている部分もあるので、たとえスケジュールを発表してもメガヒットになったかは分からない。

だが、せめて長く待ち続けたファンへの「感謝の気持ち」として希望をもたせてほしかったのだ。

もしくは最初から「最新機種でFF7が最高のクオリティで蘇る。ただし、力を入れたのでミッドガル脱出まで」と分作をやめて「これで完結」と言い切ってくれたら良かった。想定されうる一番最悪なパターンは、分作をリリースするたび販売本数が下がっていき、最後はなし崩し的に無理やりエンディングを迎えるというパターンだろう。それだけは避けて欲しい。

だが、どうやらこのままではそうなる可能性も出てくる。スクエニも慈善事業ではないのだから、売れない作品にそこまでリソースは割くことはないだろう。当然の話しだ。

だが、筆者はそれでも期待する。それがせめてもの開発者へファンが唯一できる「姿勢」だ。スクエニさん、応援しているのでどうか素晴らしい分作をリリースしてください。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。