秋には資金枯渇…コロナ対策で大学病院が財政危機に --- 境田 正樹

寄稿

HiC/写真AC

昨日(4月24日)、全国医学部長病院長会議・専門委員会委員長の嘉山孝正先生委員長とともに、コロナ対策担当の西村康稔経済再生担当大臣を訪問させていただき、11の国立大学病院の財政状況等についてご説明させていただきました。

東京大学を含む11大学の令和2年度の減収予想額は合計約1070億円で、おそらく多くの大学病院において、今秋には資金ショートしてしまうことが予想されます。そうなれば、それ以降、多くの国立大学病院において、コロナ重症罹患者はもとより、コロナ患者以外の救急患者、重症患者の受け入れや、また、薬剤、医療機器、医療用具等の購入や医療従事者の雇用の維持すら難しくなってしまいます。

現在、全国医学部長病院長会議において、全国79の国立・公立・私立大学病院の財務データも調べて頂いていますが、おそらくどの大学病院も危機的な状況に陥ることが予想されます。

また、実は、大学病院以外のコロナ患者を受け入れているほとんどの病院においても、コロナ対策用のコストが増大する一方で、大きく収入が減っており、早晩、極めて厳しい財政状況になることが予想されます。そもそも、多くの医療機関はこのようなパンデミックによる国家的医療危機を想定した内部留保を行っていませんし、厚労省の診療報酬体系もこのようなパンデミックを想定した建付けになっていません。

今回、厚労省は、コロナ新型コロナウイルス感染症に伴う診療報酬の特例措置を迅速に決めましたが、その値上げ幅では到底、医療機関の被る損失をカバーすることはできません。このまま特段の財政措置がなされなければ、日本の医療提供体制が極めて深刻な事態に陥ってしまうことは明らかです。

西村大臣からは、厚労省、文科省とも情報共有し、早急に対策を検討します、とのお話をいただきました。引き続き我々も関係各機関と連携を図りながら、様々な対策を提言していきたいと思います。


境田 正樹   弁護士、東京大学理事(病院担当)