今回のコロナウイルス感染で世界が反省しているのは、これまで多くの物品の生産を中国に依存し過ぎたということである。医療分野においてもマスク、人工呼吸器、安全防護服などなど大半が中国で生産されている。勿論、多くの国が自国でも生産しているが、その生産量は僅かである。
アルゼンチン政府は中国にひと月前に1500台の人工呼吸器を発注した。しかし、これまでアルゼンチンに入荷していない。事態は急を要するものだ。そこで、アルベルト・フェルナンデス大統領は今月15日にアルゼンチン航空の飛行機1機を中国に向かわせることに決定した。更に9機を送る予定だという。それに保健省と外務省の官僚が同乗する。
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医療安全防具の世界レベルで奪い合いが始まっている現在、そのようにして自国の飛行機を現地に待機させる体制が必要と感じたようだ。例えば、スペインとイタリア向けのマスクがフランスによって奪われたという出来事もあったからだ。
ドイツがタイ国で3Mが生産しているマスク20万枚を発注。発送前の空港の通関で米国が3倍の価格で、しかもキャッシュで支払って横取りするという事件も起きた。
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即ち、発注国は自国の飛行機を現地に送って発注商品を確実に積んで帰国するという手段を取らないといつまで経っても商品を送って来ないという状況にある。スペインも最後は軍用機を中国に送った。そうして医療器具を積んで帰って来た。
アルベルト・フェルナンデス大統領は人工呼吸器を積むことをより確かなものにするために今月4日、習主席と電話会談をもった。また翌日日曜には在アルゼンチンの中国大使鄒肖力(Xiaoli)にも電話を入れて念を押した。大使は今回送られる検査試薬キットも中国保健省に認定を受けたものが来ることを保障した。
中国がスペインに送ったキットではないとした。スペインに届いた検査キットは不良品だったからだ。それは中国でも大きなスキャンダルになったようだ。この事件をきっかけに中国は医療器具の輸出を保障する新しい規定を設けて、中国の保健省が認定したものだけが輸出できるとしたようだ。しかし、その改善は乏しいままである。
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その一方でアルゼンチンではヒネス・ゴンサレス保健相のもとBプランも計画された。国産の人工呼吸器の生産を高めることであった。その対象となったのがコルドバのメーカーテクメ(Tecme)だ。同社が輸出しようとしていた3700台の人工呼吸器もアルゼンチン政府はその輸出を禁止して買い占めた。
同社はひと月前は1週間に80-90台生産していたのが、現在150台/週まで増産している。それをゴンサレス保健相は5月には250台/週まで増産することを期待しているという。その狙いは仮に中国から予定している台数が到着しなかった場合に国産で2000台を確保したいという意向があるからだ。
ところが、生産者側にとって事態はそう簡単ではないという。生産コストは30万ペソ(50万円)だったのが、コロナパンデミアとなってからは80万ペソ(130万円)にまで上昇しているという。さらに増産するには新たに生産ラインをつくらねばならなくなる。また使用するバルブは米国のパーカー社のものを使っているが、それも国内で生産できるが、それには政府による戦略的なプロジェクトが必要だとしている。そうしないと採算ベースに乗らないからだというのがメーカーの理由である。(参照:lapoliticaonline.com)
保健省は1万台の人工呼吸器が使用されるようになると考えているようだ。現在、保健省は8900台があることをメディアに発表した。(参照:lapoliticaonline.es)
またインベントゥ(Inventu)という軍事企業が専門家とロサリオ大学の学生と一緒になって1000台/週を低コストで生産できるとしている。近くこの試作品ができあがる予定だ。(参照:lapoliticaonline.com)
国が異なれば医療班のメンタルも異なる。コロナ感染を恐れて60歳以上の医師がコロナ感染患者の治療を拒否したという。またガラハン病院では感染する恐れがあるとして医療班の3割が欠席するという事態も起きたそうだ。(参照:lapoliticaonline.es)
ということであるが、現時点までにアルゼンチンが中国から入手出来た人口呼吸器は寄贈の僅か10台である。それ以外の医療防具品は着々と届いている。(参照:lanacion.com)