お笑いコンビナインティナインの岡村隆史氏が女性へ差別的な発言をしたとしてネット上が炎上した。
岡村は吉本興業や自身のラジオで「私の発言でたくさんの人たち、特に女性の皆さんに不快感を与えたことについて、まずは心から謝罪させていただきます。本当に申し訳ございませんでした」と謝罪。
ところが、ネット上では岡村の番組降板の署名活動まで発展している。
岡村がMCの『チコちゃんに叱られる』を放送するNHKは1日、4日の「拡大版!朝ドラ“エール”とコラボ!」を急遽放送休止。
一部スポーツ紙によれば、1日と4日の放送休止についてニュースの編成上や安倍首相の緊急事態宣言の会見によるものだという。
ただ、4月17日の安倍首相の会見時の際は放送しており、岡村の不謹慎発言をうけ「多くの視聴者が視聴するゴールデンタイムに放送するのを思案している」印象をもつ。
だが、筆者は岡村が番組を降板する必要は全くないと考える。
その理由を説明していこう。
岡村は謝罪の上、相方の矢部から公開説教
騒動の発端は、岡村がMCを務めるラジオ『オールナイトニッポン木曜日』の4月23日放送分。
リスナーから「新型コロナウイルスで風俗に行けない」とメールが寄せられ、岡村が「美人が短期間でお金を稼がないと苦しいから風俗をやります」と答えた。
これに対し、『下流老人』の著書がヒットし貧困問題などに取り組むNPO法人ほっとプラス理事の藤田考典氏が異議。
藤田氏は、「岡村隆史『お金を稼がないと苦しい女性が風俗にくることは楽しみ』異常な発言で撤回すべきではないか」という記事を寄稿。
藤田氏の記事は、あっという間にツイッターで話題になり、「岡村不謹慎発言」、「男女差別」といったワードがトレンド入りした。
藤田氏は、女性の貧困状態を喜び性の商品化を歓迎する発言をした岡村や番組に苦言を呈した。
その後、岡村が謝罪後も藤田氏はヤフーニュースで「困っている女性が風俗に』大変不適切で深く反省」遅すぎる見解表明と問題意識の希薄さ」という記事を寄稿。
藤田氏は、岡村の謝罪が遅く、本人の番組降板も含め厳正な対処を求めている。
岡村氏は確かに生活に困り風俗で働き稼がざるをえない人達へ配慮に欠けたコメントと言わざるをえない。
しかしながら、岡村は自身の不適切発言について30日のラジオ本番を待たず謝罪しており、比較的迅速な対応だろう。
岡村のラジオ番組では、相方のお笑いコンビナインティナインの矢部浩之氏が緊急生出演。
矢部は「風俗キャラを作りキャラクターになり無意識に話していたと思うけど電波で発言したのは大問題」と岡村の発言を問題視。
その上で、矢部は岡村を「ラジオってセリフで話してるわけやないから岡村隆史が女性に対し男尊女卑の考えや軽視してる人間やと思われても仕方ない」と指摘。
その他、矢部は岡村に「50歳で風俗ネタで笑いをとるのは改めた方がいい」、「結婚して景色を変えたほうがいい」など次々と相方岡村を厳しく叱責し続けた。
岡村は風俗発言に対し真っ向から向き合い矢部に怒られながら真摯に反省した態度を示した。
筆者も20年以上ラジオを聴いているが、冗談なしで相方の言動を約2時間真剣に注意した番組は初めてみた。
放送終了後からツイッター上で話題になり、《ナインティナインがますます好きになった》、《岡村の発言内容はいきすぎたが、非を認めて謝罪した。降板しろ運動で1人の人生を追い詰めないで、もう1度チャンスを》などという岡村に再びチャンスを与えてほしい声も少なくない。
風俗関係の人たちも否定的な意見ばかりではない
それでは、実際に風俗関係の人たちの意見はどうか。
元風俗嬢のナカジマハルキさんはツイッターで「(岡村さん)人当たりもよくプレゼントも用意してくれ、好印象。批判する人が風俗を下に見る発言が本当に嫌。(中略)風俗も他の仕事と同じように見てもらえる平等な社会を望みます」と持論を述べた。
『裏のハローワーク』や『実録ドラッグリポート』など裏社会に関する著作を多数出版した作家の草下シンヤ氏は「岡村さんの発言は風俗業界では常識で、スカウトの人間も経営側も同じことを言っている(中略)。『本当に風俗好きなんだろうな、その中の常識で語ったら炎上したんだな』というのが素直な感想」とツイートしている。
元風俗嬢の女性から「ここぞとばかりにフェニズムを語る人間がいて違和感があります。風俗の世界はもっと懐が広くて深いの」と意見が寄せられた。
もちろん岡村の発言に否定的な意見もあるだろうが、それほど多くはないという印象をもつ。
岡村降板署名運動は論点がズレている
岡村への批判はラジオのみにとどまらず、テレビへも波及している。
『チコちゃんに叱られる』(NHK)は、岡村がMCを務め日常の素朴な疑問を解答者にぶつける人気バラエティ番組。
解答者が答えられないとチコちゃんが大声で「ぼ~っとしてんじゃねえーよ」と発言するのでおなじみだ。
一昨日、ツイッター上で「女性軽視発言をした岡村隆史氏に対しチコちゃんの降板及び謝罪を求める署名活動」が巻き起こっている。
当番組は子供が多く視聴する公共番組として、風俗発言をした岡村の司会は不適切だと主張するが無理がある。
岡村は別番組で発言したのと、問題の本質が貧困な人たちが性風俗に流れてしまう今の日本社会や福祉にあるわけだ。
藤田氏もヤフーニュースの記事で「性産業に従事する構造が作り上げられ、性産業、性の商品化の需要は凄まじい。異常なほど女性の性的搾取に執着する構造が福祉の拡大や拡充を阻止している実態がある」と述べている。
つまり、『チコちゃんに叱られる』の司会降板云々は当初の問題提起からズレている。
「番組降板反対人数 対 支持人数」が比較にならない
次に、数字の面でみると岡村のラジオを放送するニッポン放送に寄せられた意見はわずか120件、放送終了後に300件の計420件でNHKに関しては非公表だが多くて数千件といったところだろう。
中には岡村を擁護する声も含まれており、同一人物が複数回抗議している可能性も考えられる。
岡村のラジオスポンサーである高須クリニックの高須克弥院長は「スポンサーとして、岡村隆史くんのおわびを受け入れます。これからも応援し続けます」と引き続きスポンサー支援継続を表明した上で、「この問題は僕の中では終わりました。これ以上彼を追い詰めることに明確に反対します」とこれ以上騒動を広げるのに反対の意を表明した。
また、前述した「女性軽視発言をした岡村に対しチコちゃんの降板及び謝罪を求める署名活動」の賛同人数は7100人。(4月30日現在)
日本の人口は総務省統計局によれば1億2596万人(4月20日現在)であるのを考えれば、「番組を降ろせ」と騒いでいるのは人口の1%以下にすぎない。
一方で、岡村のラジオは今年2月17日から23日に行われたビデオリサーチ首都圏ラジオ聴取率調査」で時間帯トップの聴取率を獲得している。
岡村の相方ナインティナインの矢部浩之と一緒にコンビを組んだ時代から通算すると、26年目の長寿番組。
加えて、『チコちゃんに叱られる』においても、視聴率は平均15%程度と高水準をキープしている。
ちなみに、4月18日の放送は世帯視聴率が15.7%、個人視聴率が8.5%をマーク。
世帯視聴率でいえば、正確な数字算出できないがおおよそ1000万人~1500万人が視聴していると推計される。
つまり、岡村がMCを務める番組に対するクレーム数と視聴者数を比較すれば、断然支持する方が多いといえる。
このように、岡村は公共の電波で矢部から前代未聞のガチ説教をうけ謝った上で深く反省の意を示した。
また、「番組から降ろせ」という意見に比べ、支持する人たちが多数なのを考慮すれば岡村の番組降板は全く必要ない。