「週刊朝日」が河井夫妻の事件での検察の取り調べに疑問を投げかける『「河井さんと一緒に沈んでもらう」東京地検に恫喝された渡辺典子県議が激白 前法相夫妻の捜査大詰め』という内容のある記事を載せている。
とりわけ、検察側が狙いを定めているのが、広島の重鎮と呼ばれる元県会議長、檜山俊宏県議らと河井夫妻の関係だ。広島地検と東京地検特捜部は4月28日、桧山県議や渡辺典子県議、坪川竜大県議、3人の県議会控室などを家宅捜索した。
この中で最も取り調べ回数が多いとされるのは、かつて河井夫妻と親しかった渡辺県議だ。すでに10回ほど事情聴取を受けている。
しかし、渡辺県議は強引な取り調べで「自白を強要された」として同30日、最高検察庁の監察指導部に公平な取り調べを求める「要請書」を送付した。
この渡辺典子県議は、サンフレッチェ広島の久保会長の娘であり、ミス近大グランプリ、ミスオブミスキャンパスクイーンコンテスト準グランプリという輝かしい経歴の「美人過ぎる政治家」の一人だけに注目度も高い。
その記事の内容については、リンクで読んでいただきたいが、実はAERA dot.でも読める「週刊朝日」電子版の記事は、なかなか「朝日らしくない?」中立公正なものが多いのだ。
「関西生コン&辻元清美を朝日が報道した天変地異」で取り上げた「辻元清美議員に“ブーメラン”? 生コン業界の“ドン”逮捕で永田町に衝撃」なんか、いまだもって関西生コンの話となるとなぜか沈黙する大手マスコミで例外的な記事だった。
河井陣営への捜査への3つの疑問
上記のような強引な取り調べがあったとすれば問題だが、選挙違反事件そのものも、かなりの無理筋だと思う。理由は3つである。形式的に犯罪構成要件に該当すればいいというものではない。
①ウグイス嬢への追加支払いは日常的か?
ウグイス嬢への限度を超えた支払いは、どのように迂回などしているかは別として、ほとんどの政治家がなんらかの形で実質的にはやっていると認識されている。法定の報酬が現実離れしているからだ。
ならば、これを事件化するなら、河井陣営のケースが超高額だったりしてとくに悪質ということでないと恣意的であるのではないか。しかし、そういうことでなく、むしろ、控えめな金額と言われる。
②選挙が近くない時点での地盤培養行為は買収か?
河井陣営から県会議員などでの資金提供を立件しようとしているようにも見えるが、これも疑問が多い。
国会議員が地方議員に資金提供することは、しばしばされており、選挙期間直近以前のものは、「地盤培養行為」として立件されてこなかった。本件のような、選挙の3か月前では、形式的に犯罪構成要件にあったとしても、立件の前例がないのである。
これに似たケースは、カルロス・ゴーンに対する金融商品取引法違反の疑いでの逮捕である。これは、普通は粉飾決算が対象で報酬について適用されたことはなかった。
そこで、これが広い意味での虚偽記載にたとえ当たったとしても、いちども前例のない立件を外国人経営者に対して、しかも、社内の経営権争いの片方の肩を持つようなかたちで適用するのは疑問であると、私は批判してきた。
やはり、これまで適用がなかったようなことで立件するなら、よほど悪質でないならおかしいが、そのようにはみえない。
いってみれば、雀荘で賭け麻雀してもゴルフ場で握ってても形式的には賭博でも、普通は放置しているが、それを、逮捕するならよほど金額が多いとかいう場合だろう。気に入らない奴がやっていたらそれで捕まえてやれというのはよくない。
③検察への人事介入への抵抗なら許されるか?
この事件は、河井克行氏が検察改革に熱心であり、その延長線上で、検察官の定年延長問題があり、「検察改革」を政権が強引にしているので、その対抗措置としての立件だから、許されるというマスコミ論調がある。
しかし、常識的には、普通なら立件しないような事件を、検察が別件で状況を有利にするためにするのは、禁じ手であろう。それが許されるなら、マスコミが検察批判をしたら普通は立件しないような事件で逮捕されることも批判されないことになりたまったものではあるまい。
検察による捜査中なので、検察のやっていることを不当だと決めつけることはしないが、上記のような観点をみて、李下に冠を正さずという気持ちで捜査は行われるべきだと思う。