九州から東海地方にかけて、各地で大雨による災害が発生しており、熊本や福岡では、命を落とす人が多く出ています。8日午後9時時点で熊本県を中心に57人が死亡、4人が心肺停止、16人が行方不明となっており、うち、人吉市で18人の死亡が確認されました。かつて、私が20代の頃にリサイクルのアドバイザーを務め、何度も行っている熊本県人吉市は最も死者数が多く、変わり果てた姿となって報道されているのを見ると、本当に心が痛みます。亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された方々に対しまして心よりお見舞い申し上げます。
さて、今回報道で何度も聞いた大雨特別警報ですけれども、台風や集中豪雨で数十年に一度の大雨が予想される場合に発令されます。ただ、この特別警報が出される前に必ず大雨警報が出されており、その段階が避難してくださいという状態です。特別警報が出されている状態は、もはや避難が終わっていて命を守ってくださいというレベルです。
先ほども言ったように、数十年に一度のはずなんですけれども、もはやその表現と感覚は我々とは違います。
昨日までに発令された大雨特別警報は14回目になり、近年特にこうした警報と被害が多発し、その度に治山治水のインフラ整備との関連が言われてきたように思います。
2017年7月 | 2018年7月 | 2019年10月 | |
九州北部豪雨 | 西日本豪雨 | 台風19号 | |
死者数 | 40人以上 | 200人以上 | 100人以上 |
被害額 | 1900億円 | 1兆1580億円 | 未公表 |
例えば昨年の台風19号では、民主党政権時代に一旦建設中止を決めた八ッ場ダム、これが自民党政権に戻って建設がされ、利根川の氾濫を防いだとも言われました。今回は、平成20年の熊本県知事選挙の争点になって、現職知事が建設中止を決めた川辺川ダムがあればとも言われます。もちろん正確な検証がなく勝手な決め付けはできません。ただ、国も地方もこうした防災については真剣に議論を重ねています。
私が横浜市長時代だった時もそうでした。ちょうどゲリラ豪雨という言葉が使われ始めた時でしたが、市長就任時の下水道管の基準は時間降雨量60mm、これは10年に一度の激しい雨に耐えられるようにという基準でした。時間当たり何mmという議論をしたのを今でも覚えていますけれども、横浜市では現在、時間降雨量82mm(50年確率降雨)にも耐えられる都市づくりを目指しています。しかし、どんなに議論をし、そして整備をしても数十年に一度という規模に全インフラを整えることは無理です。はっきり言えば、人間が自然に打ち勝つのは無理なので、防災ではなく減災をより考えていかなければいけないと思います。
例えば、田畑が広がっている地域でも、人はなぜか山の裾野に住んでいるケースがよくあります。この件、実際に水害で土砂崩れが発生した場所で聞きました。すると、かつては平地をなるべく田畑に使うことを前提にしていたからだそうです。しかし、田畑の耕作のあり方も時代とともに変わってきました。そして何より地球環境も変わってきました。ですから、土地代が安いからそこに高齢者施設が建っているとか、住居が建っている状況を改善していく必要があるのではないかと思います。単に法令で禁止するのではなく、例えば公共料金に差をつけるなどの政策的誘導も必要だと私は思います。
地方も都市部も関係なくセーフティーな町を作っていく。今、人命が奪われているこのときに言っても仕方がありませんが、しかし、こういうときにこそ考える必要もあると思います。
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年7月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。