東芝の株主総会決議結果の開示-国広エフィシモは大健闘と考える

ドラッグストアの店頭から「うがい薬」が消えておりますが、こういった場合、塩野義製薬や明治ホールディングスから、なんらかの「コロナへの効用」に関するコメントは出されるのでしょうか?大阪府知事からは生産体制にも踏み込んだ発言がありましたので、かなりむずかしい対応を迫られているようにも思えますが。。。(以下本題)

(東芝本社 Allen Lee/flickr :編集部)

8月4日、7月末に開催された東芝の定時株主総会における議案の決議結果(議決権行使結果)が開示されました(東芝8月4日付け臨時報告書はこちらです)。大株主であるエフィシモ側の取締役候補者3名については、賛成率が43%、42%、38%です。一方で社長さんは58%。いや、これは驚きました。国広弁護士がアドバイザーについたエフィシモは大健闘といえそうです。定時株主総会が1カ月延期されたことも、本件では微妙に影響しているのかもしれません。

先日のブログでは、「まあ、この結果(会社側上程議案がすべて可決)はおおよそ予想していた通りでした」と書きましたが、こんな結果になるのがわかっていたら偉そうに書かなければよかった(国広さん、候補者の皆様、たいへん失礼いたしました)。なんといってもISSもグラスルイスも会社側提案に賛成推奨をしておりましたので「うーーん、かなり厳しいかな」と思っておりました。

もちろん、この議決権行使結果について会社側は(遅くとも総会前日までには)わかっていたと思いますが、これ結構東芝側にとっては難題ですよね。ここからはまた勝手な野次馬的意見ですが、エフィシモの株主提案はすべて議決権の4割程度の賛成を得ていますので、来年もまた実質的に同様の株主提案が出た場合には過半数の賛成が得られる可能性が出てきました。東芝グループ全体として、コンプライアンス経営への取り組みを「目に見える形」で運用しなければ、そもそも「両立する議案」だけに株主提案に賛成票が上積みされるかもしれません。

私は東芝の株主構成を把握しているわけではありませんが、たとえば3%でも5%でも保有している大株主がいれば「俺たちの要求を呑まないと、来期は社長を信認せず、また株主提案に賛成するぞ」といった要求が出てくるかもしれません(まさに漁夫の利)。もちろん利益供与にあたるような要求はできませんが、「株主共同利益のため」として、様々な大株主からの要求が会社側に届くのかもしれません。株主総会の機能は「会社意思決定機能」だけでなく「経営に対する定量的な評価機能」もありますが、この結果の開示は、これからの東芝と株主との「建設的な対話」を促すものとして大きな意味がありそうです。

もちろん国広さんは本気で株主提案を通すつもりで総会に乗り込んだと思いますので、「大健闘では意味がない」とおっしゃるかもしれませんが、上記のとおり「株主との建設的な対話を今後も促進する」という意味では、たしかに国広エフィシモは株主提案を行ったことで、(誰が得をするのか・・は別として)実質的な目的は達成しているのかもしれませんね。


編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2020年8月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。