いや恐ろしいことになりました。ついにあのファクターXと言われたBCG、エビデンス重視の真面目な免疫学者たちや感染症医たちは否定する傾向が強かったBCGが、高齢者の感染を予防するという論文がCellに出てしまいました。(NEJMとかLancetではなくCellというのがまた憎い。)
臨床試験の解析の報告はこちらに出ていました。退院の時にBCGを打って、(2週間後インフルエンザワクチンも打って)その後の感染予防に効果があるかどうかを調べたところ、どうやら予防効果がありそうだという報告です。
入院中の高齢患者は、退院日にプラセボまたはBCGを単回投与で接種されました。すべての患者は12か月間フォローアップされています。
分析の結果、プラセボ群と比較して、BCG群では新規感染の発生率が53%減少しました。この減少は、すべての気道感染症で80%に達しました。多変量解析により、利益のほとんどが冠状動脈性心臓病(CHD)と慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者に対するものであることが示された。この中間分析は、BCGがCOVID-19感染から保護するという概念を明らかに強調しています。
大きな副作用なく全てのウイルス感染(コロナだけではない)、特に呼吸器感染を1年間は減らすというとてもインパクトのある結果です。
単球でエピジェネティックな再プログラミングとサイトカイン産生の増加が見られた
この理由もとても好き。そう訓練された自然免疫(単球)の証明です。昔妄想していたことが証明されることは、単球の一研究者だった自分は興奮しています。
でもよくみたらおわかりでしょうが、BCG打っても感染は0にはなっていませんからね。それだけは周りに説明する時に気をつけましょう。それが現実です。
でも肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチン含めて、本当高齢者のワクチンプログラムを再度考え直す時かも知れません。(日本人にはBCGを新たに打つ必要はない可能性もあります)
明らかにBCG打った方が高齢者の感染予防に役立つというこの論文。今までの常識に捉われてはダメだということを教えてくれており、免疫学が大好きな医師にとってとても楽しい論文でした。
日本人に感染が少ない説明、ファクターXが一つ証明されました。
編集部より:この記事は、危機管理専門血液内科医 中村幸嗣氏のブログ「中村ゆきつぐのブログ」2020年9月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。