蓮舫氏質問に疑義:行政妨害の域に達した学術会議擁護

高山 貴男

政策目的達成が行政機関の任務

行政機関の任務は法で規定された政策目的を達成することである。

今話題の学術会議で言えば同会議は日本学術会議法第2条に規定された「科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的」を達成することが任務であり、首相に任命拒否されて欠員が生じたなら補充として別の学者を会員として推薦しなくてはならない。これをやらない学術会議は公務放棄に他ならない。梶田会長はさしずめ「仕事をさぼる公務員」といったところだろうか。

しかし、筆者のような意見は少数派であり、学術会議を巡る国会審議ではまた公文書の話が出てきた。具体的には立憲民主党の蓮舫議員が学術会議会員の任命手続きに関する公文書の開示を求めたのである。

https://twitter.com/renho_sha/status/1324215073758351360

繰り返しになるが行政機関の任務は法で規定された政策目的を達成することである。

だから目的達成に反しない範囲ならば公文書の未作成・不開示・廃棄の措置は問題ない。

蓮舫議員がまずやることは一部学者が任命拒否されたことによって学術会議の活動目的達成に具体的にどのような支障が生じたのか説明することである。

それを説明しない限り蓮舫議員はなんら支障が生じていない事柄、すなわち国民の利益になんら関係のない事柄を問題視しているという誹りが免れまい。

誰でも参加できる公文書管理批判

2017年の森友学園騒動以来、行政による公文書の未作成・不開示・廃棄を批判する言説が非常に優れたまさに民主主義を体現した言説のような風潮があるが、蓮舫議員の質問をみてわかるように「公文書を開示せよ」「記録を残すべきだ」「黒塗りは問題だ」という主張は実に簡単である。

学術会議の活動目的を論ずれば必ず同会議の活動実績を確認しなくてはならなくなる。これは大変な労力であり歴史ある会議なら尚更である。

森友学園の土地取引では「8億円の異常な値下げ」ばかり強調されているが、では適正な金額がいくらなのか、そもそも国有地の売却だから経済的利益を問題にする必要はあるのか。行政機関は営利組織ではないから国有地の売却で検証すべきは目先の金額ではなく公益ではないか。学校建設のための国有地の売却は国民の福祉増進が目的ではないかetc…国有地売買など真面目に議論すると大変である。

しかし「公文書を開示せよ」「記録を残せ」という主張はなんの労力もない。

政策に対する価値判断を下さないでさも賢人のごとく「なるほどわかった。しかし、どうしてそういう結論になったか知りたい。だから公文書を開示してほしい」と言うだけである。知識も知恵も何も必要ない。言葉は悪いが子どもでもできることではないか。

ここで重要なことは公文書管理の議論は子どもレベルの人間の参加を許してしまうリスクがあるということである。

それを避けるためにも、行政による公文書の未作成・不開示・廃棄を問題視する前に、行政の活動目的と閲覧可能な情報(公文書に限られない)を照合し活動目的達成状況について評価を下すべきである。

蓮舫議員のように学術会議の活動目的に触れず人事手続きに関する公文書の開示を求めることになんの価値もない。学術会議に対する価値判断を避けるためのパフォーマンスであり、国会議員の地位を利用した行政妨害と批判されても仕方あるまい。