女性が活躍しない日本?

岡本 裕明

世界経済フォーラムが発表したジェンダーギャップ指数で日本が世界156カ国中120位と低迷していると各方面で報じられています。日経によると安倍氏が首相になったばかりの2013年のランクは136カ国中105位だったのでどう比較するかは別として明らかにランキングではこの8年で下がっているようです。

thodonal/iStock

報道では日本のジェンダーギャップが改善しないことへ批判する声も多いのですがどうも引っかかる点もあります。今日はこの辺りを見てみましょう。

まず、ジェンダーギャップ指数の構成なのですが、4分野14の指数をベースに計算しています。4分野は経済、教育、健康/保健、政治です。2021年度の分野別ランクですが、156カ国中、経済は117位、教育が92位、健康/保健が65位、政治が147位です。ところが14の指数を見ると1位が3つあります。識字率、初等教育、出生の分野の男女比であります。それが例えば教育で見ると初等教育が1位なのに中等教育になると一気に129位まで下がっているのです。健康/保健でも出生は1位なのに平均寿命だと72位まで落ちます。

このランク付けはどうなっているかと言えば0から2の間で0が男性オンリー、2が女性オンリーとし、その中間である1に近いほどベストスコアを取れるという仕組みなのです。ですので例えば平均余命は女性が長生きするから72位でランクが悪いというわけです。何か変です。

経済についてみると労働比率とか男女賃金格差はそこまで悪くなく、それぞれ68位と83位です。ところが役員の数とか、専門家の数となると途端に下がり、それぞれ139位に105位です。

政治の場合は3項目(議員数、閣僚数、過去の元首の数)全部失格です。政治の部で日本より下の9つの国はカタール、ナイジェリア、イランといった中東の国がほとんどです。経済分野も日本より下は中東が主流でそれ以外の主な国はメキシコ、韓国、インドといった具合です。

このジェンダーギャップはそもそも白人が作り上げた指標で彼らの水準に基づいて計算されるようになっています。よって経済と政治分野については宗教的背景も含め、アジア諸国はフィリピン(17位)のようにキリスト教国は別として相対的に低い結果が出ています。つまり、白人と白人の影響力が強かったアフリカ諸国で比較的小国に優位な傾向がでます。

では指標の定義が日本やアジアの本質と違うから我々は重視しなくてもよいのか、と言えばそれも違うわけで女性がなぜ活躍できないのか、その考察の余地は大いにあるわけです。

例えば日本の女性が働いている点ですが、歴史的に夫婦や家族が総出で仕事をするのが当たり前だった国です。女性の就業の点では1966年に生まれた「三食昼寝付き」にみられる高度成長期の例え話に惑わされているのだと思います。ただ、なぜ、女性が偉くならないか、ここが問題なのです。

バンクーバーにおける日本人の30-50代の男女比率は1:3で女性が圧倒的に多いのですが、当地で日本人女性が仕事で頭角を現している人は極めて限られます。多くは被雇用者、コンサル業。しかも勤め人でもマネージャーやその上のポジションになっている人はほとんどいません。

一つの理由が子育て期間に仕事をしない、あるいはせいぜいアルバイト的なものにしてしまい、キャリアを没にしてしまうからです。非日本人の方とご結婚されていてもその傾向は同じです。つまり日本人は子供に溺愛するほど自分の手から離すことはありません。こちらの世界では出産後、女性は子供を託児所に預け、すぐに復職するケースが多いので考え方の違いはあるでしょう。以前、子供が生まれたばかりのある日本人の方にこの件を聞いたのですが「子供を託児所に預けるなんて考えられない。この子は誰にも触らせない」と断言されました。

政治については以前、二階幹事長がズバリ女性議員の結束が欠如していると指摘したことをご紹介したと思います。総裁選に出るための20票の議員票が集まらないと言います。自民だけで衆参女性議員は39名いるのですがその半分の支持が取れないのはなぜなのか、それは自分の所属する党派をより重視していることと女性議員同士のグループ化とその先鋭化であります。

これは政治も経済も共通なのですが、日本人女性の弱点として大人数の支持を得にくい傾向があります。直言し合えるごく小人数の同性との接点を重視する傾向が強く出ます。つまり社会は女性を許容しているのですが、うまく成長路線をつかめていないことはあると思います。私見ですが、女性は女性の目線を大変気にしていますが、成長したいならそれを断ち切り、男性社会で逞しく生きる選択肢が正解です。これは断言します。よって上記の二階幹事長のスタンスは間違いで女性議員が男性議員を取り込む力量を見せることが重要かと思います。

最後に比較ランク的な話で申し訳ないですが、韓国と比べてみましょう。彼らのランクは102位ですが、経済、教育、健康/保健、政治の各分野は123位、104位、54位、68位です。日本が117位、92位、65位、147位である点と比べると明白に劣っているのは政治になります。その中身を比較すると女性のトップが出ていないことが韓国とほぼ唯一の相違であります。閣僚数や議員数は時の流れがありますからこれは修正や改善は可能。トップが出ないのが日本の最大の問題であります。ちなみに47都道府県の女性の知事、現在何人かご存知ですか?

山形の吉村知事と東京の小池知事、たった2人であります。日本の女性の問題はジェンダーギャップというより女性のリーダーが出ないこと、これに尽きるのではないでしょうか?

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年4月1日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。