日本企業よ、海外事業で羽ばたけ

セブン&アイホールディングスの中期経営計画が発表になり、井阪隆一社長が「海外事業は成長の軸の一つであり、スピードウェイの買収はその橋頭堡だ」(日経ビジネス)と述べています。この背景はアメリカのスピードウェイというガソリンスタンド併設型コンビニ大手を紆余曲折しながらも買収し、当局とも合意に達し、本格的に北米でのセブンイレブンの展開が進むことが同社にとってキックオフになるということでしょう。

セブンのカナダを含む北米の店舗数は1.3万軒で中計で1.5万軒に、それ以外の海外の店舗数は3.9万軒から5万軒にするとあります。国内が2.1万軒強ですので同社の海外シフトは明白です。

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同社はほんの一例で日本企業は国内の成長鈍化から海外にそのチャンスを見出すしかなくなっています。この傾向は何十年と続いていますが、セブンイレブンのようにかつてはドメスティックの典型とされていた小売サービス業すら海外にウエイトを置くようになっています。

ユニクロの海外展開は留まるところを知りませんし、無印良品もしっかりその経験を積んでいます。100均のダイソーはカナダ事業は契約上のトラブルがあり、一時期低迷していましたが、仕切り直しでようやく多店舗展開の道筋をまい進し始めています。

ただ、私は海外進出を果たした企業が未だに日本的展開と日本本社の顔色を見ながらの状態であることに違和感を感じています。ユニクロぐらいになると現地化する仕組みが育ってきているのですが、それ以外の会社では進出先でも日本と日本本社を意識し、ローカル化がなかなか進まない傾向が強かったりするのです。なぜ、そこまで「日本」に頼らねばならないのか、これが私にはわからないのです。

もちろん、私は日本人ですので現地で日本の大手進出に伴い、地元の日系企業も育ってくれるのは重要だと思っています。しかし、私はフェアネス(公正さ)と能力、工夫する力など総合的に判断すると地元の日系企業のチカラは残念ながら知れていると思っています。理由はたとえば日系企業ならば日系の人を顧客とするなど狭い関係を築いているところが未だに多く、業務の内容やレベルが地元で対等に戦えるほど十分ではないことが多いのです。

ではそれでもなぜ、日本からの進出企業が地元の日系企業を使うのか、それは言葉と発想、そして最後は「無理が効く」からであろうと思います。また本社に説明するにしても「現地で〇〇年ビジネスをしている〇〇社の社長によると…」と書かれると妙な説得力があるのです。私から見れば本当かい、と思うようなこともありますが、そんなものなのです。

日本企業が海外に進出するにおいて最も重要なエレメントの一つは駐在員の質だと思います。正直、本社に向いて仕事をする駐在員はもう必要ありません。ゴルフしかしない駐在員もいりません。特に単身赴任層は土日が暇だから、というのですが、ならば現地の楽しみ方を必死で経験してほしいと思います。ゴルフといった閉鎖的なクラブ社会だけでは現地のことは何もわからないのです。

次に駐在員は無期限という発想にすべきでしょう。銀行員が子会社や関連会社に出向すれば島流しとかもう二度と本社に戻れないといったお涙話がありますが、あれと同じでその地でしっかり業績を築くまで帰さないぐらいの感覚で良いと思います。私は駐在員時代、2年のお約束の赴任でしたが5年目ぐらいに業務上、移民権を取らされたあたりから「あぁ、これは帰れないのだな」と思ったものです。

しかし、そこから私の業務に対する姿勢が圧倒的に変わったのも事実です。今、手掛けている仕事は自分の会社の仕事なのだと。誰かにバトンを引き継ぐのではなく、自分で最後、お尻まで拭き取らねばならないと思ったのです。だからこそ、当時、債務超過300億円という会社で日本の親会社にしてみれば最大の問題児が5年ぐらいの間で一気に解消に向けて飛躍していくのです。

もう一つ、私が強く感じるのは顧客はローカル、よって日本人のやり方を捨て、現地のルールを学び、人を知り、社会をウォッチすることでした。赴任当時から今でも紙の地元の新聞を購読していますが、社会や世相、ニュースに対する捉え方や考え方を知ることで現地のスタンダードを体得していったのです。(配達されるので否が応でも手に取るプッシュ型なのですね。)

もちろん、日本人としての自負はあり、日本人らしさやその良さは自分なりに出していると思います。まさにハイブリッド型ですが、日本式が前面に出ることはまずありません。そしてカナダ30年になると8割がカナダ式で2割が日本式ぐらいでしょうか?

それぐらいにならないと日系企業がローカルで花咲くことはないのです。先日のブログで大谷翔平は今までのMLBにいった選手と違い、現地に溶け込み、人気が高いと書きました。まさに今日の話はそれと同じなのです。

日本人は海外で非常に高いレベルの賞の受賞やコンクールでの優勝者を多く輩出していますが、そこから花が咲かないのは1位になったこととそれを生かす工夫がミスマッチしているからのように思えます。

日本企業が海外で花咲くには現地化させるか、日本人を使うならYKK吉田工業のように一度赴任したら帰国目途なしぐらい極端な対策もアリだと思います。日本人駐在員がそこまで覚悟できているか、といえば否かもしれませんが。ただ、日本企業は追い込まれてます。その温度が日本の中と外では大きく違うのもこれまた事実なのであります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年7月19日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。