司法書士はリスクに見合う仕事なのか?

朝から不動産取引の決済でしたが、書類と資金のやりとりを終えて、つつがなく終了しました。といっても、手続きを始めてから完了まで、スムースに進んでも2時間近くかかりました。

日本の不動産取引の決済は、未だに極めてアナログの世界です。

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売主と買主、そしてそれぞれの仲介を担当する不動産業者、さらに金融機関担当者、司法書士が銀行の会議室に集まり、書類の不備が無いかを確認した上で、資金の決済を進めます。

売り手が不動産に設定している抵当権の解除や買い手の銀行が行う抵当権再設定、所有権の移転登記に関わる手続きは、すべて司法書士の仕事となります。

司法書士が全ての書類をチェックして、問題無ければ、登記をする前に資金取引を始めてしまい、その後に司法書士が法務局へ書類を持ち込みます。つまり、登記書類が法務局に受領されるまでの間は、司法書士のリスクとなってしまうのです。

さらに、色々お話を聞いてみると、不動産取引に伴う詐欺事件も最近増えているようです。

偽造技術を巧妙になり、印鑑証明のような紙の書類が、本物かどうかを確認することも難しくなっているそうです。また当事者となっている人たちが、結託して買い手をだますような事件もあるそうで、それを見抜くのは至難の業です。

悪意のある人たちに巻き込まれ、偽造した書類で資金をだまし取られたりした場合、登記手続きを担当した司法書士も連帯責任で被害者から訴えられることもあるそうです。

最終的には責任割合を裁判所が認定するようですが、自分に落ち度がなくても、トラブルに巻き込まれることもあるのです。

そのようなリスクを回避するための損害保険もあるそうです。しかし、被害額が莫大になった時に保険でどこまでカバーされるかは不安だと思います。

不動産の取引の度に司法書士さんにお世話になりますが、小さなミスも許されない、毎回とても神経を使うお仕事です。少なくとも、私のようなずぼらな人間には絶対にできない極めて緻密な事務処理能力が必要な仕事であることは確かです。

取引金額によっても変わってくるのでしょうが、今回の司法書士報酬の明細を見ると、抵当権設定手続きに伴う印紙代(税金)は40万円近いのに、司法書士報酬はその6分の1くらいでした。

このようなリスクの高い仕事にかかわらず、それに見合った司法書士報酬を果たして受け取れていると言えるのでしょうか?


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年9月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。