緊急事態宣言が解除されても「もう戻らないこと」

新型コロナウイルス対策で、19の都道府県に発令中の緊急事態宣言が、ようやく全面解除になるようです。また、まん延防止等重点措置の解除も同時になされるようです。まだ油断はできませんが、以前の日常生活が少しずつ戻ってくる動きが始まりました。

しかし、一度壊れてしまうと、もう戻らないものもたくさんあります。

東京の都心部の繁華街を歩いていると、路面の好立地にテナントが退去したままになっているビルが目立ちます。

写真は交差点の角地に銀行の支店があった場所です。こちらの店舗だけではなく、都心の銀行の路面店は次々と移転統合されており、ATMの設置場所も減少傾向にあります。新型コロナウイルスの感染拡大だけではなく、金融機関の収益の悪化も影響していると思われます。

超低金利の長期化で銀行の収益の中心である利ザヤが縮小して、コストを削減するために、店舗やATMのような固定費を削らざるを得なくなってきたのです。また、ネットバンキングの広がりによって、店舗そのものの存在意義が小さくなってきているのも影響しています。

路面店には金融機関だけではなく、飲食店も数多く入っていますが、こちらも多くの店舗が休業や廃業に追い込まれています。緊急事態宣言が明けたとして、かつてのような賑わいが戻ってくるかというと、あまり期待しない方が良いと思います。

在宅ワークや時差出勤などが普通になれば、会社が終わってから同僚と飲みに行くという習慣は無くなります。また、引き続きコロナウイルスの感染リスクに警戒する人は減らないでしょうから、大人数での宴会は控えられるはずです。

緊急事態宣言が解除されても、都心の繁華街の風景は今までとは随分違ったものになることでしょう。

変わってしまった街の情景を嘆く人もいますが、私はポジティブに捉えています。

飲食店は撤退するところもあれば、ピンチをチャンスと捉え、安くなった賃料の物件に積極的に出店するお店も出てきました。撤退するところがあれば、進出するところもある。健全な資本主義社会の新陳代謝と言えるからです。

撤退して空室になっている路面のスペースにこれからどんな業態が進出してくるのか。緊急事態宣言解除後の街の情景は、今までとは随分変わっていることだけは確実のようです。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年9月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。