予断を許さぬ終盤の選挙情勢
いよいよ10月31日の総選挙の投開票日が迫ってきた。マスコミ各社の終盤の情勢調査によると、自民党の単独過半数確保の有無が焦点のようである。10月24日の参議院神奈川選挙区補欠選挙での自民党候補敗北の影響も注目される。
さらに、全般的には、「閣外協力」により立憲民主党と共産党の野党選挙共闘が進展し、200選挙区を超える小選挙区で立憲民主党を中心とする野党候補の大規模な一本化が行われたのは今回の総選挙の特徴であり、その影響も注目されよう。いずれにしても予断を許さぬ終盤の選挙情勢である。
岸田首相の「攻撃力」と「迫力」の弱さ
このように、選挙情勢が予断を許さないのは、一つには、自民党総裁である温厚な岸田首相の「攻撃力」と「迫力」の弱さを指摘できよう。いうまでもなく、選挙は食うか食われるかの戦いであり真剣勝負である。戦いである以上は、相手陣営の弱点を徹底的に攻撃するのが勝利への近道である。まさに「攻撃は最大の防御」である。
ところが、テレビの討論会等を見ると、岸田首相は相手陣営の弱点をほとんど攻撃しない。相手陣営の弱点の最たるものは、立憲民主党と共産党の「閣外協力」である。なぜなら、もし政権交代が起これば、両党の「協力関係」がさらに進み、実態上「容共政権」が誕生することになるからである。
共産党の綱領によれば、「閣外協力」は、同党の統一戦線戦略そのものであり、過渡期の政権である「民主連合政府」を経て、「社会主義・共産主義政権」への第一歩なのである(10月4日付拙稿「ついに共産党と閣外協力する立憲民主党:社会主義政権への第一歩」。10月22日付拙稿「立憲・共産の容共政権の是非も総選挙の重要争点だ」参照)。
したがって、岸田首相としては、テレビの討論会等においても、「容共政権」の是非を争点化して、国民に「自由主義か共産主義か」の体制選択を迫るべきなのである。これを全く行わないため、事実上、立憲民主党と共産党を助けていると言うほかない。
迫力に欠ける「成長と分配の好循環」の主張
その代わり、岸田首相は、格差是正を目指して、「新しい資本主義」や「成長と分配の好循環」を主張するが、いずれの主張も今後の日本経済成長発展戦略としては迫力に欠ける。
このため、楽天の三木谷社長からは、「新社会主義であり金融市場を崩壊させる。」などと厳しく指摘されたのである。指摘の通り、日経平均株価は「岸田ショック」で一時2000円以上も急落した。そのため、岸田首相は、急遽「金融所得課税強化」の主張の事実上の撤回を余儀なくされたのである。
政治には「夢」と「希望」が不可欠
政治は常に国民に「夢と希望」を与えなければならない。中国・習近平国家主席の「中華民族の偉大な復興」もそうである。これは、国民の愛国心に訴え圧倒的支持を得て、中国共産党政権の安定と継続を図るためのものでもある。
その点、自民党は他の野党とは異なり、国民に夢と希望を与え、戦後長きにわたり、日米同盟による安全保障体制を確立して平和を維持し、戦後日本の経済発展を成し遂げた実績のある政党である。
安倍前首相の「攻撃力」と「迫力」
その自民党の安倍政権が8年近く続き、その間6回の国政選挙で圧勝したのも、「アベノミクス」や「一億総活躍社会」などのスローガンを掲げ、国民に夢と希望を与えてきたからである。
それとともに、岸田首相とは異なり、安倍前首相は、遠慮することなく、ことあるごとに、「3年3か月の悪夢の民主党政権」と旧民主党政権を厳しく批判し攻撃した。この攻撃的で迫力のあるイメージ戦略も、長期政権維持に有効であったと言えよう。
岸田首相は国民を豊かにする「大成長戦略」を訴えよ
この20年間の日本の国内総生産(GDP)の成長率は極めて低い。中国や米国の経済成長に比べてその差は開く一方である。そのため、日本社会全体に生き生きとした活力が失われている。
したがって、岸田新政権においては、速やかに、コロナ後の、国民を豊かにし、夢と希望を与え、スケールの大きな「大成長戦略」を策定し、情報通信、人工知能、ロボット、科学技術、工業、農業、運輸、貿易、化学、流通、教育、研究、医薬、航空、宇宙、観光、サービス産業など、日本のあらゆる産業分野の「IT化」「デジタル化」「技術革新」「雇用改革」「効率化」を断行し、驚異的な「生産性革命」を成し遂げ、日本の活力と国際競争力を取り戻し、飛躍的な経済成長により、パイを大きくし、税収を拡大し、国家財政を強化しなければならない。
そうすれば、国民に対して、「ベーシックインカム」(「基本所得保障」)など、政府による十分な「分配」も、安心な「社会保障」も持続可能になるのである。岸田首相は、この日本経済を飛躍的に成長発展させ、国力を飛躍的に増大させ、国民を豊かにし、夢と希望を与え、スケールの大きな「大成長戦略」を早急に策定し、力強く国民に訴えるべきである。岸田新首相には、日本国民に対して、スケールの大きな「夢」と「希望」を与えていただきたい。