今回の総選挙は「勝者なき選挙」だった。与党は293議席と絶対安定多数を維持したが、甘利幹事長が小選挙区で落選(比例復活)して幹事長を辞任する意向を示している。総裁選の論功行賞で金銭疑惑の払拭されていない甘利氏を幹事長に起用した岸田首相の人事が失敗だった。
後任は高市政調会長が有力といわれているが、これは当初、安倍元首相が求めた人事とされており、安倍氏の「院政」が強まるだろう。経済政策でも原発推進派だった甘利氏の影響力が弱まり、岸田首相の求心力が低下すると思われる。
しいていえば唯一の勝者は、ほぼ4倍増の41議席を獲得し、公明党を上回る第3党に躍進した維新だが、そのうち25議席が近畿で、いまだに大阪ローカル色が抜けない。松井代表は次の代表選挙に出馬しない意向なので、党の刷新が必要だろう。
立民の「ひとり負け」
今回の選挙の敗者は、共産党と組んで96議席に減らした立民党である。辻元副代表が落選し、枝野代表も辛勝で「ひとり負け」である。候補を一本化した効果より共産党のネガティブな影響のほうが強かったということだろう。
もともと立民は、東京都の小池知事が2017年に希望の党を立ち上げたとき排除した人々を寄せ集めた党であり、55年体制の社会党の焼き直しである。最初から政権を取る気がなく、スキャンダル追及で国会を埋め尽くすことしか能がない。
ほとんどの有権者は政策の中身なんか知らないので、森友や加計など「汚い政党だ」という印象を与えて自民党に嫌悪感をもたせ、それをしつこく追及する。マスコミも政策では視聴率をとれないので、スキャンダルばかり報道する。
組織のない野党の勝ち目はそれしかないと割り切った立民のマーケティングは(昔の社会党と同じく)それなりに賢かったが、それは有権者が政策を選択する能力をもたないことを前提にした情報弱者マーケティングであり、その賞味期限は切れた。
「長い55年体制」の終わり
その限界を乗り超えるためには、自民党に政策で対抗できる野党を再構築すべきだが、そういう方向をめざした国民民主は失敗した。
枝野氏は逆に共産党と組む人民戦線方式に転換したが、歴史的に人民戦線が成功した試しはない。宗教的な結束力でまさる共産党が、中途半端な社民を食ってしまうからだ。今回もその例にもれない。
万年野党の時代は終わった。1993年に自民党政権が崩壊したあと、それを再構築しようとした小沢一郎氏が失敗し、昔に戻ってしまった長い55年体制が終わろうとしているのだ。小沢氏が今回、初めて小選挙区で落選(比例復活)したことは象徴的である。
枝野氏は辞任して政策なき万年野党を清算し、維新が中心になって国民民主を含めた新しい建設的な野党をつくるべきだ。その党首として、橋下徹氏を迎えてはどうだろうか。
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