日本衰退の中で「世界一の食」というコンテンツは守れるのか?

秋になると日本はおいしいもので溢れます。

国産の松茸や栗などは、もちろん最高の秋の味覚ですが、それだけではありません。

10月になるとイタリアから白トリュフがやってきます。

そして、11月は中国からやってくる上海蟹(写真)です。今週出かけたお店のウェブでの説明によれば、9月から10月は産卵前で卵を体に持ったメスがおいしくなり、11月になるとゼラチン質のチュウチョウセンをもったオスがおいしくなる。だから、11月の最初の1週間は、メスオス両方がおいしい貴重な期間だそうです。

白トリュフにせよ、上海蟹にせよ、現地とほとんど変わらないクオリティで味わえるのは、どちらも最高品質の食材が空輸で日本に届けられるからです。

そして、これから年末にかけては、国内の蟹が楽しめます。

世界中のおいしいものが、これだけ高品質で味わえる国は日本しかありません。

高級食材だけではありません。ファストフードや居酒屋のようなお店も、信じられないような価格で驚きの美味しいお料理を提供しています。わずか400円足らずで牛丼を提供する吉野家は、先進国では最もコスパの良い飲食店ではないでしょうか。

海外に移住した日本人の何割かは数年すると日本に戻ってきます。その理由の1つは、食の豊かさだと思います。

個人に対する高い税率を嫌い、海外に移住したものの、現地でのライフスタイルに満足できず、結局日本に戻ってきてしまうのです。

私は、日本を離れるつもりは今のところありません。お金のためにライフスタイルを犠牲にしたいと思わないからです。

ただ、日本経済が衰退し、これから益々貧乏になっていく中で、この食の豊かさが守れるのか心配です。

経済力が弱まれば、高品質の食材が他国に買い上げられ、手に入らなくなります。国内からも海外に美味しい食材が流出していきます。また、円安になれば輸入インフレによって、海外からの食品の価格は上昇します。

経済環境の変化に関わらず「世界一の食」という日本が世界に誇れるコンテンツを何とかこれからも守って欲しいと思います。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年11月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。