日本共産党の総選挙敗北
日本共産党は、今回の総選挙で公示前の勢力12名から2名を減らして10名となり敗北した。共産党と「閣外協力」の合意をした立憲民主党も公示前の勢力110名から14名を減らして96名となり惨敗した。共産、立憲とも事前の情勢調査からすれば、予想外の敗北と言えよう。
このため、立憲枝野代表は、惨敗の責任を取って辞任を表明し、代表選挙が行われることになった。しかし、共産志位委員長は、今でも立憲との「閣外協力」の合意を評価し、その継続を求めている。
両党の敗因は「閣外協力」
両党、特に立憲の敗因については様々な説があるが、筆者は選挙戦略としての「閣外協力」合意の失敗が大きいと考えている(11月2日拙稿「立憲・共産敗北:閣外協力の大失敗」参照)。
すなわち、共産との「閣外協力」の合意により、立憲と共産がこれまで以上に接近したため、このような動きに不安を感じ、これまで立憲を支持していた無党派中間層の大量の票が立憲から離れ、日本維新の会や国民民主党に流れたと、筆者は分析している。
とりわけ、立憲の最大の支持母体である連合が「閣外協力」に強く反対したことは立憲にとって致命傷になったと言えよう。連合組合員の票が行き場を失ったとも言われているからである。選挙後の共同通信の一般国民世論調査によれば、野党共闘見直しが61%に上っている。
共産の敗因は、「閣外協力」の合意により、共産が候補者一本化のため、小選挙区における立候補者を激減させたことが致命傷である。このため、小選挙区・比例区ともに票を減らした。共産は「閣外協力」を解消しなければ、今後も党勢はじり貧になるであろう。
時代遅れ令和版「非武装中立」の共産党
立憲・共産の最大の敗因は、「閣外協力」など選挙戦略の失敗と同時に、「安全保障政策」にあると筆者は考える。総選挙期間中の北朝鮮による度重なるミサイル発射、中ロ艦隊による日本近海での共同威嚇行動、中国の覇権主義的軍拡、台湾有事の危険性など、北東アジアの安全保障環境は悪化の一途である。
にもかかわらず、共産は、いまだに、自衛隊違憲・解消、日米安保廃棄であり(党綱領四参照)、まさに、時代遅れの令和版「非武装中立」である。これに対し、立憲は自衛隊合憲・日米安保容認であるが、「非武装中立」の共産と「閣外協力」の協力関係に入ることによって、立憲の安全保障政策が極めて不安定になる危険性がある。このことに危惧した賢明な日本国民も少なくなかったと言えよう。
旧日本社会党の「非武装中立」
旧日本社会党は「非武装中立」を外交安全保障政策の基本としていた。その内容は、憲法前文及び9条の平和主義の精神に基づき、米国の世界戦略である日米安保条約(日米軍事同盟)に反対し、同条約に基づく「日米共同作戦」と「海外派兵」を狙う自衛隊を憲法9条違反としてこれを容認せず、非武装且つ非同盟中立により国家及び国民を守るという旧日本社会党の外交安全保障政策である(日本社会党委員長石橋政嗣著「非武装中立論」1980年同党中央本部機関紙局刊行参照)。
上記の旧日本社会党の「非武装中立」は、今でも、自衛隊違憲・解消、日米安保条約廃棄を主張する共産党の外交安全保障政策と重なり合い共通することは明らかと言えよう。しかし、「非武装中立」は今から40年以上前のものである。40年以上が経過し、ソ連崩壊、中国経済的台頭、米中新冷戦、中国覇権主義的軍拡、北朝鮮核武装、尖閣危機、台湾有事、さらには、極超音速弾道ミサイル兵器、無人AI兵器、サイバー、電磁波、宇宙空間電子兵器、衛星破壊など、軍事技術の驚異的発達を含め、北東アジアの安全保障環境は激変した。
共産党の「非武装中立」は時代遅れの暴論
そのため、超大国は別として、今や一国だけで国の独立と国民の生命・安全を守ることができない時代である。したがって、各国にとっては、自衛力の保持とともに、NATO(「北大西洋条約機構」)や日米安保条約などによる集団安全保障体制は必要不可欠である。
この観点からして、共産党の「自衛隊違憲・解消、安保条約廃棄」すなわち令和版「非武装中立」の主張が、いかに時代遅れの、現実離れした、危険極まりない暴論であるかは、余りにも明らかである。