黒坂岳央(くろさか たけを)です。
30代半ばを超えてから、日常生活を送る上で強く意識することがある。それは、見知らぬ人にはできるだけ丁寧に接するというものだ。車の運転をする時は狭い道はこちらから積極的に道を譲るし、道ですれ違ったらこちらが避ける。仕事に関係ない相手と何かあったら「ごめんなさい」と早めにお詫びを伝えるという具合である。
といっても、筆者は優しさをPRしているつもりはない。あくまで自己防衛のためである。世の中には普通の顔をしていても、内面は想像もつかないほど攻撃的な人が混じっている。時にその攻撃性を持って拳を振われる危険性もある。彼らはパッと見て、外見でわかりやすく危険な顔をしていない。そのため、万が一危険な人を引いて余計なトラブルにならないためにも、そうしているのだ。
世の中には危険な人がいる
街中には危険な人が一定数存在する。多くはないが、紛れもなくそういう人たちはいる。実体験を取り上げたい。
過去に東京の恵比寿を歩いている時に、大男が向こうから歩いてきた。こちらは道を避けたのだが、相手はそのままストレートにズンズン歩いてくる。もう少しこちらが避ければぶつかることはなかったのだが、「こちらはすでに半歩避けている」と若さゆえのプライドがジャマしてそれ以上動かず、結果的に相手とぶつかってしまった。「変な人だな」と思い、そのまますれ違った。だがその後、その男がこちらに向かって追いかけてきたのが見えた。たまらず、手近なたくさん人がいる店舗に入ったら追跡を諦めて男はどこかへいった。しばらくは緊張で手の震えが止まらなかった。
また、昔アルバイトで働いていた時に職場の派遣男性が口論を始めた。時々、その二人は「その言い方は止めてくださいよ」みたいに軽くぶつかっていたので、傍から聞いていると「またか」と感じて気に留めなかった。だが、その時は溜まっていた怒りが爆発したようで、その場で相手を拳で殴り倒してしまった。「普段から気に入らなかったんだよ」という趣旨のセリフを吐き、その男は別室に連れて行かれた。その後の行方は分からないが、二度と姿を見ることはなかった。見た目は大人しそうな男性で、自分は時々雑談をしていた相手であり、とても暴力を振るうようには見えなかった。
さらに電車で通勤する時の話だ。電車内で一人でブツブツと「チキショー…チキショー…」と独り言を言っている男がいた。周囲のサラリーマンと思しきスーツ姿の会社員が「うるさいから静かにしろ」と独り言男を注意した。すると独り言男は激昂し、その場で会社員と取っ組み合いになった。近くにいた自分は危険を察知し、すぐに場所を変えたのでその後のことはわからない。
こうした危険な人は何度か目撃してきた。カッとなると力づくで相手に一撃を加える人たちである。
プライドや正義感より命が大事
世の中にはプライドや正義感のために、危険な人物の被害を受けてしまうケースがある。
先日、Yahooニュースでマスクをしていない人を注意した人物が、相手から返り討ちにあって半身不随になったという記事が出た。事件が起きた時期を見ると、コロナの感染拡大の只中であり、「マスク警察」というキーワードが流行っていたタイミングだ。その時期に外出先でマスクをしていない人を見て、思わず正義感から注意してしまったのだろう。だが、筆者から見れば注意したくなる対象というより、あまり近づきたくないと思える対象に感じられる。
また、20代前半の頃に阪急宝塚本線の電車で席に座って寝ていたところ、「若いくせに老人に席を譲れ」と起こされ叱られた。その後は半ば強引に座席を奪われる経験をした。それ以来、混雑しそうな電車やバスは、最初から席に座らずに立つようにしている。
こちらが間違っていないことに、見知らぬ人から叱られば誰しもカチンと来るだろう。街中でルールを守っていない人を見れば、腹も立つかもしれない。だが、そんなプライドや正義感を通そうとして、危険な人の怒りを買えば、今度は自分の命が脅かされる危険性がある。感情に任せて争いごとに応じれば、失うものはあまりにも計り知れない。リスクの大きさは甚大だが、リスクに見合うリターンが皆無である。リスクリワードの悪い勝負は仕掛けてはいけないのだ。
◇
警察庁の統計によると、日本からは犯罪が減り続けており、ドンドン平和になっている。「最近はぶっそうになって」という肌感覚は統計的に否定される。だが、それでも危険な人は平和な現代日本に依然として存在している。そうした人と偶然にエンカウントし、不幸にも相手からの一撃を受けないためにも見知らぬ人ほど丁寧に接した方が良いと思っている。
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