「今年こそやるぞ」年末年始の決意が実らない理由

黒坂 岳央

黒坂岳央(くろさか たけを)です。

SNSの投稿を見ていると、毎年年末年始に「去年は目標未達だったが、今年こそがんばります」というこの時期特有の決意表明が見られる。結論からいえば、こうした決意が実ることはほとんどない。だが、筆者はえらそうに人のことはいえない。自分自身も昔はこうした決意を毎年して、毎年失敗した自己体験を持つからだ。個人的には決意表明をする意義は論理的に否定されると思っている。

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「せっかく頑張ろうという、人の意欲を挫くようなことをいうな!」とお叱りを受けるかもしれないが、年末年始恒例の決意をする誤りを論理的に展開したい。

人の感情は長期継続しない

「今年こそは!」という言葉は、気持ちの高ぶりによって生まれている。問題は人の感情は長続きしないということだ。だが、多くの願望成就は長期的な努力によって実現されるという前提がある。

たとえばダイエットを目指す人の多くは、長期的な食事制限や運動などが必要となる。数日間は苦痛に耐えることができても、無理が続けば段々と感情もネガティブへと触れていき、最終的な敗北は必至である。この場合、必要なのは強い決意ではなく、長期的取り組みが継続できるための戦略や施策だ。つまり、真に必要なのは決意という感情の高ぶりではなく、冷静かつ実現可能性の高い地に足がついたアプローチといえよう。

人の感情は水物であり、最初はアツい気持ちがあっても時の経過で風化してしまう。感情で挑戦すれば、感情が原因で敗北するのだ。

計画の多くは妄想である

多くの場合、年末年始に決意する計画は、妄想の域を出ないと言っていいだろう。

筆者は英語を教えている立場なのだが、ブログやYouTubeを見て連絡をくれる英語初心者が作る「学習計画」は計画になっていないことがほとんどだ。

1冊のテキストを学ぶのに必要な期間が、概ね3ヶ月ほどかかるのに「一日で学習に割ける時間は1時間しかありませんが、自分はこれを2週間で終わらせます!」といってきたり、「3ヶ月後にはTOEICで○点取ります」といって出す計画はTOEICのスコアアップにつながらない内容になっていたりする。

これは決してその人をバカにしているのではない。初心者故に成功した経験がなかったり、知識が不足しているために、具体性で実現可能性のある計画を立てるのは難しいということである。

筆者は海外旅行に行った際、現地での活動計画を立ててもほぼそのとおりにはならなかった。トランジットの遅延や、人との待ち合わせ場所の誤り、勘違いやミスコミュニケーションで頻繁に計画の変更を余儀なくされた。海外旅行ですら、あらゆるトラブルや不確定性を想定した計画を立てることが難しいのである。

年末年始の決意表明は、多くの場合が長期的な計画である。実行可能性のある計画を立てる難易度の高さは言うまでもない。僅かな時間で立てる計画の多くは、妄想で終わるだろう。

願望成就に年末という区切りはいらない

さて、これまで散々年末年始の決意はいらないと、否定的な展開を続けてきた。ではここからは具体的に願望成就に必要な取り組みを取り上げたい。

端的にいえば、その方法論とは「あえて年末年始という区切りを考えない」ということだ。「今年こそは!」と決意したくなる挑戦の多くは「緊急性は低いが、重要性の高いタスク」である。英語学習、ダイエット、副業、資産運用などが挙げられるだろう。

だが、考えてみればタイミングを区切る必要はないはずで、必要なら即日で取り組めばいいのである。それをあえて年末年始に考えるということは、「即日では行動するのは億劫だが、感情的モーメンタムの力を借りて始めよう」と受身の姿勢に感じてしまう。

筆者は過去にダイエットで7kg痩せるという目標を立てた。いつからいつまでに達成するということは一切考えず、実現可能性のあるダイエットの戦略を練って、即日で必要なことを毎日取り組んだ。その結果、年末年始の決意を必要とせず無事に目標の体重に減量することができた。

年末年始の決意をしたくなる気持ちはよく分かる。だが、それをする意義はあまりないだろう。タイミングなど意識せず、必要なら即日で取り組めばいいのである。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。