相手の名前を打ち間違える人が知らないリスクの大きさ

黒坂岳央(くろさか たけを)です。

筆者がビジネスにおいて、相手とテキストコミュニケーションを取る上で気をつけていることがある。それは「相手の名前を絶対に打ち間違えない」ということだ。名前だけではなく、ビジネスブランド名や会社名にも非常に気を使っている。

なぜなら、名前を間違える行為はデメリットしかなく、そのデメリットの度合いもかなりの大きさがあるからだ。頻繁に名前を間違える人はその度合を認識していないことが多く、また名前間違いは知力や経歴とは無関係に起こる。筆者が個人的に体験した限りでも、東大卒、海外MBAホルダーの相手から名前を間違えられた経験が何度もある。

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そのため、これを防止できるかは書き手が「相手の名前を間違えてはならない」という意識を持つことと、「間違えないためのノウハウ」を持っているかに依るのだ。本稿がその気付きの一助になれば幸いである。

名前を間違えることで相手の心の中で起きていること

名前を間違えると何が問題なのだろうか?それは相手の心の中で

  • この人物はこちらを重要な相手と思っておらず、軽視している。
  • この人物は観察眼、注意力、ビジネス力が劣っている。

というネガティブな印象を与えてしまうことだ。これは相手に与える印象がそうであるという話で、事実としてそうであるかはとりあえず別の話である。

筆者は名前をよく間違えられる。正しくは「黒坂岳央」なのだが、「黒崎」とか「岳史」といった具合だ。ひどい場合は名字も名前も両方間違えて送られることもある。

元来、自分はそういう部分には寛容な性格で、名前を間違えられることに慣れてしまったので、イチイチ相手に指摘はしないし、別にそれで相手への態度が変わることもしない。だが、これをされた大多数の人は相手に悪印象を抱くだろう。メリットがない以上、やるべきではない。

なぜ名前を間違えてしまうのか?

人間は誰でも間違いはする。筆者も日々、間違いだらけだ。自分は一度や二度の間違いをうるさく咎める、面倒な人物は目指していない。だが、それでも名前を間違える人はたまたまというより、必然的に間違えている。そのため、あちこちで名前を呼び間違える。なぜそのようなことが言い切れるか?それは名前を間違える理由によるものだ。詳細を論考したい。

「相手の名前」というのは、本質的に相手側には重要事項で、こちら側には重要度が小さいという特性がある。それ故に相手に興味関心がなかったり、注意を払う必要性への理解がなければ間違いを犯しやすい性質がある。その証拠に、頻繁に名前を間違える人でも、好きなアイドルや恋人の名前は絶対に間違えないし、社長などの名前は間違えない。相手に興味関心があるか、大きく敬意を払っている場合にはそうした人たちも細かいところに目が行き届く。

つまるところ、名前を間違える理由は、相手に興味関心がなく、重要人物だと認識しておらず、また名前を間違える行為のリスクを理解していないということの現れに他ならないというロジックが成り立つだろう。「相手が間違えやすい名前をしている」という理由は成立しない。好きなアイドルの名前はや社長の名前はどれだけややこしい名前でも、絶対に間違えないからだ。

こうした注意力の欠落はあらゆる場面で発揮される。こうした相手の仕事を見ると往々にして誤字脱字が多かったり、読み手の立場を考えずにダラダラわかりにくい文章を長文で書いてくる傾向がある印象を受ける。

そして問題はテキストコミュニケーションに留まらない。過去に頻繁にこちらの名前を間違える、一流大卒でハイキャリアな人物と対面で話をしたことがある。その際、相手は話が一方的で自分の話したい内容に終止し、論点がわかりにくく、会話のキャッチボールが成立しない体験をした。つまるところ、こちら側への配慮がない。

名前を間違える、というprimitive(基本的)な事項をクリアできていないという小さなシグナルが、大きな仕事でさらなるほころびが出る兆候になり得る。それ故に特にクライアントワークを受けるフリーランスなどの立場でこれをやると、身を滅ぼすことに繋がりかねない。

相手の名前を絶対に間違えない簡単な方法

以上のように相手の名前は間違えない方がいい。メリットは一切ないが、相手によってはデメリットの深さは計り知れないからだ。

相手の名前や会社名、ブランド名を絶対に間違えないために、個人的にやっているビジネスハックがある。それは相手が送ってきたメッセージに書かれたフルネームを、コピペするというものだ。

筆者は仕事を通じて、お客さんや取引先とメールやビジネスチャットのやり取りをしている。最近ではマレーシアやシンガポールにある企業とのコミュニケーションも急増し、名前はアルファベットや中国人名の難しい漢字を入力する機会も増えた。それでも絶対に間違えることはできない。なので、必ず相手の名前をコピペするようにしている。そうすれば、相手の名前を間違えることは100%防止できるのだ。

コピペをする際の一つだけ注意点があるとすれば、書式である。HTMLメールでコピペすると、相手の入力した書式までそのままコピーされてしまうことがある。下手をすると、フォントの色や大きさがおかしくなってしまうため、「書式をコピーせずにペースト」するようにする必要がある。

筆者はこの方法を使うようにしていることで、「渡邉」「渡邊」といった細かく、間違いが起こりやすい漢字の入力も正確に打つことが出来ている。この方法は能力の高さもセンスも時間も必要がない。ノウハウとして知っておけば、常に100%の制度で機能する有用性があるので、使わない手はないと思っている。

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相手の名前は絶対に間違えるべきではない。「小さなことだ」と軽視する人は、無自覚に大きなロスを被っているのだから。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。