日本に戦闘機共同開発の政治的、外交的能力はない

1月12日付けジェーンズ・ディフェンス・ウィークリーに「Lockheed Martin to develop variant of F-35 ‘tailored ‘ for foreign customer」という記事が掲載されています。

米国は某国に対してF-35の新たな派生型を開発することをロッキード・マーティン社に許しました。有料版によると、同社は米政府の承諾のもと、イスラエルに対してイスラエル専用のF-35Iのパッケージの開発と販売を行っています。これによってイスラエルは自国の兵器体型をF-35に使用できます。F-35Iはイスラエル製のコンピューターなど電子機器も採用しています。

F-35A 防衛省・自衛隊HPより

米国はノルウェーにもどのレベルまでかは知りませんが、F-35の情報開示を行っています。また本来トルコはF-35のパートナーでしたが、その際にも米国に情報開示を求めていました。
実際それが可能か、またそのレベルもどうかというのはありますが、少なくとも国益のために米国に情報開示を求めることは普通にやっていることです。

ところが我が国の場合、それを政府、外務省、防衛省も嫌がります。アメリカ製だからブラックボックスは当たり前、情報開示もされない、そう諦めてまともな交渉をしません。

「我が国独自の環境に即した国産兵器」例えばAAM-5、AAM-3など国産ミサイルは使えません。F-15にしても電波妨害システムは米国から提供されませんでした。

そのような場合、そうであれば他国の候補機に乗り換えるぞ、といような交渉をするべきですが、できないのが日本の政府と防衛省、外務省です。

よほど米国のご機嫌を取り結ぶのが大事なのでしょう。まるで属国です。

過去の防衛省、空幕の調達を鑑みれば、戦闘機の調達は航空戦力の充実と国防ではなく、「米空軍と同じ玩具」を買うことでしかありません。

かつてF-35導入を決定した森本元防衛大臣は僕も出演したフジテレビの番組で「F-35の導入が遅れても問題ない。その間F-4の飛行を停止すればいい」と発言していました。その間は訓練もアラートもしなくてもいい。つまり、我が国に対する脅威は存在しないので、F-4の飛行させなければ機体寿命は持つということです。つまり空自戦闘機部隊は航空博物館でいいというわけです。

こういう考え方の人たちが戦闘機を選定したり、開発したりしているわけです。

このようなメンタリティで、我が国主導の戦闘機の共同開発ができるのでしょうか。大変疑問です。

まあこの記事の某国が我が国だったら笑えますが。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2022年2月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。