会長・政治評論家 屋山 太郎
韓国の大統領選挙が3月9日に迫った。かつては誰が当選すれば、対日関係はどう変わるか注目していたものだが、今は全く関心がない。退陣する文在寅氏がいきなり投獄されても驚かない。韓国政治は予想もできない程、路頭に迷っているように見える。
今や700万人が海外に脱出し、合計特殊出生率はわずか0.84(2020年)。出生率が1.0未満の国は、世界でも韓国しかない。しかもソウルの0.64は、信じられないほど低い。自殺も多く、OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で自殺率は10万人当たり25.7人となっており、加盟国38ヵ国平均である10.9人の倍を超えている。特に70歳代の自殺率は38.8人に上っている。
以上、見てきた数字だけで、若者が国を捨て外に出ていく一方で、残された人達は70歳を過ぎると死にたくなるという状況が見て取れる。国民全体が自暴自棄に陥っているのではないか。
国家再生のためにやるべきことは、まず国家の威信を取り戻すため、国と国がむすんだ条約は、何があっても守る姿勢を打ち出すことだ。
日本と韓国は1965年に日韓基本条約を結び、その付属協定として日韓請求権協定を定めた。請求権として日本から韓国に無償3億ドル、有償2億ドルが支払われた。日本として韓国との貸借関係はこれで終わりである。
5億ドルは本来、韓国人で損害を被った人に対する賠償や年金にも使われるはずだったが、当時の朴正熙大統領の判断で製鉄会社や農業への投資、道路やダムなどのインフラ投資に使われた。結果は“漢江の奇跡”と呼ばれる経済復興をもたらした。その代わり賠償金も年金もない、という人達が対日請求をする裁判が日本で起こされた。見当違いだと却下されたのは当然だ。
そこで韓国裁判所に訴えたところ韓国の裁判所は「政府は日本に請求せよ」とか「日本企業の財産を差し押さえよ」という判決を出した。対日請求を要求した時点で「条約を結んだから無効だ」という説明をするのが司法の役割だ。韓国が司法、行政、立法の三権がきちんと区別されていない国家であることを示している。
退任した大統領が刑務所に入ることが韓国では常時起きている。これも三権がその権限をわきまえないことから起こっている。
韓国人は「植民地時代」を恨みに思っているようだが、日本は韓国を併合したのであって、欧米人のように植民地にした訳ではない。併合したからには、まず首都は日本並みにしようと、台北もソウルも下水道造りから始めている。
手元に朝鮮人陸軍特別志願兵制度の記録がある。これは朝鮮人も日本人も公平に扱っていた一つの証拠でもあるが、昭和15年の採用者は3,060人、応募者は84,443人。応募倍率は28倍程である。昭和17年には4,077人を採用し、倍率は62倍だった。この数字を見て「奴隷のように扱われた」と言う人は何と反論するのか。
(令和4年2月23日付静岡新聞『論壇』より転載)
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屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生まれ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、解説委員兼編集委員などを歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。著書に『安倍外交で日本は強くなる』など多数。
編集部より:この記事は一般社団法人 日本戦略研究フォーラム 2022年2月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は 日本戦略研究フォーラム公式サイトをご覧ください。